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佐藤 健一

更新日:2026-10-28

読了目安:10分

マルチチャネルマーケティングとは、複数のチャネルを使って顧客に情報を届けるマーケティング手法です。Webサイト、SNS、メール、SMS、プッシュ通知、実店舗などを使います。

例えば、SNSで認知を広げ、メールで詳しい情報を届け、SMSやプッシュ通知でリマインドする、という役割分担です。各チャネルは別々に運用でき、同じ人に順番に送るとは限りません。

ただし、チャネルを増やすだけでは成果につながりません。顧客データが分断されたり、同じ内容を何度も送ってしまったりすると、かえって顧客体験を損なうこともあります。

本記事では、意味やオムニチャネルとの違いから、チャネル選び、戦略の立て方、施策の設計例までを解説します。

SNS・メール・SMSなどのチャネルごとに役割を分けた、マルチチャネルマーケティングのイメージ

マルチチャネルマーケティングとは

マルチチャネルマーケティングとは、複数の販売経路やコミュニケーションチャネルを使い、顧客に商品・サービス・情報を届けるマーケティング手法です。ECサイト、実店舗、SNS、メール、SMS、プッシュ通知、メッセージアプリ、広告などが代表的なチャネルです。

マルチチャネルの段階では、各チャネルを独立して運用し、顧客データや管理はまだつながっていません。例えば、同じ新商品を店舗とECサイトで扱い、メールでも案内していても、顧客情報や配信結果を別々に管理していればマルチチャネルの状態です。

役割分担は、チャネルごとにデータを管理したまま決められます。一方、購入済みの人を除いて別のチャネルで案内するには、同じ人を識別できるデータや更新済みの対象者リストが必要です。このように一部をつなぐ施策は、クロスチャネルへ進む取り組みとして区別します。

オムニチャネル・クロスチャネルとの違い

マルチチャネル、クロスチャネル、オムニチャネルは、いずれも複数のチャネルを扱う考え方です。違いは、使うチャネルの数ではなく、チャネル同士がどの程度連携しているかにあります。

種類 意味 例
シングルチャネル 1つのチャネルだけを使う 店舗のみ、ECサイトのみ、メール配信のみで運用する
マルチチャネル 複数のチャネルを独立して運用し、データや管理は未連携 新商品を店舗・EC・メールで案内し、顧客情報は別々に管理する
クロスチャネル 複数チャネルの一部が連携している 同じ顧客のEC購入データを使い、購入者をメールの追加案内から除く
オムニチャネル 主要な接点を連携し、一貫した顧客体験を提供する 店舗とECの会員・購買情報を統合し、購入場所をまたいで案内や受け取りをそろえる

マルチチャネルから一部をつなぐクロスチャネル、主要な接点を統合するオムニチャネルへと、連携を深める段階として捉えられます。メールからECサイトへリンクするだけでは、顧客データまで連携しているとはいえません。

オムニチャネルでは、チャネルをまたいでも顧客体験が途切れにくい状態を目指します。例えば、ECで見た商品、店舗での購入履歴、アプリの利用状況、メールやプッシュ通知への反応をもとに、次の案内を出し分けるような運用です。

ただし、すべての企業が最初からオムニチャネルを目指す必要はありません。まずはマルチチャネルで接点を広げ、反応のよいチャネルを見極めたうえで、顧客データやマーケティングオートメーション(MA)を活用しながら連携を深めていく進め方が現実的です。

マルチチャネルとオムニチャネルの違い ポイント

マルチチャネルでは接点を独立して運用し、クロスチャネルでは一部を連携させます。オムニチャネルは主要な接点をつなげ、一貫した体験を作る考え方です。実践では、複数のチャネルから始め、必要な場面だけ連携させます。

マルチチャネルマーケティングのメリット・デメリット

マルチチャネルマーケティングは、顧客との接点を増やせる一方で、運用が複雑になりやすい施策です。導入前に、期待する効果と起こりやすい課題の両方を整理します。

メリット

主なメリットは、顧客が利用しやすいチャネルに合わせて情報を届けられることです。1つのチャネルだけでは接触できなかったユーザーにも、複数の接点からアプローチしやすくなります。

  • 顧客との接点を増やせる
  • 単一チャネルでは届きにくいユーザーにもアプローチできる
  • 顧客の行動や好みに合わせてチャネルを使い分けられる
  • 認知、購入、継続、休眠復帰など段階別に施策を分けられる
  • チャネル別の反応を見ながら改善できる

デメリット・注意点

一方で、チャネルを増やすほど、配信管理や効果測定は複雑になります。役割分担や配信ルールを決めないまま始めると、顧客体験を損なう可能性があります。

  • チャネルごとに顧客データが分断されやすい
  • 同じユーザーに似た内容を何度も送ってしまうことがある
  • 配信頻度が増え、ユーザーに負担を与える可能性がある
  • チャネルごとにKPIが異なり、全体の成果を見にくい
  • 配信コストや制作工数が増えやすい

特にメール、SMS、プッシュ通知を併用する場合は、「誰に、どのチャネルで、何を、いつ届けるか」をあらかじめ決めます。似た内容を何度も送ると、配信停止や通知オフにつながることもあります。

まずは目的に合うチャネルから始め、配信頻度、反応率、CVR、配信停止率などを見ながら、必要に応じてチャネルを広げていく進め方が現実的です。

主なチャネルと使い分け

マルチチャネルマーケティングでは、販売チャネルとコミュニケーションチャネルを分けて考えると整理しやすくなります。まず、すでに接点のある対象と運用に使える人員・予算を整理し、主に使うチャネルを選びます。以下は、市場で使われる一般的なチャネルの比較です。

チャネル 向いている場面 接点の前提・運用上の注意
メール 詳しい案内、資料送付、リード育成 有効なアドレスと販促配信の同意、停止対応が前提
SMS 期限前の短い案内、対象を絞ったリマインド 有効な電話番号と販促配信の同意が前提。配信費と文字数を管理
アプリプッシュ通知 アプリ利用促進、休眠復帰、クーポン案内 アプリ導入と端末の通知許可が前提。頻度と通知オフを管理
Webプッシュ通知 Webサイト再訪問、速報、キャンペーン告知 対応ブラウザと通知許可・購読が前提。訪問者全員には届かない
WhatsApp 海外顧客・訪日客への案内、多言語での連絡 連絡先と同意・停止対応、テンプレートなどの配信条件を確認
SNS 認知拡大、キャンペーン告知、初回接点作り 投稿制作・応対の体制が前提。表示はアルゴリズムに左右される
Webサイト / LP 商品説明、比較検討、問い合わせ・購入の受け皿 集客・更新の体制が前提。導線・フォーム・ページ速度を整える
LINE公式アカウント 友だちなど配信接点のある人への案内 アカウントと配信対象を整え、頻度とブロックへの対応を管理
実店舗・イベント / 広告 店頭・会場の接点作り、広告による認知・集客 現場の人員・開催費、広告の制作費・運用費を見込む

情報量と受け取り方に合わせ、チャネルごとに内容を調整します。配信頻度や停止対応はチャネルごとに管理します。配信の同意があっても、実際に届く・読まれるとは限りません。SMSの開封率は標準的には測れないため、詳しくはSMSで確認する効果測定指標を参照してください。

なお、 OTP や MA はチャネルそのものではなく、複数チャネルを活用するための用途・仕組みとして整理するとわかりやすくなります。 例えば、OTPはSMS、メール、WhatsAppなどを使った本人確認の仕組みです。MAはユーザー行動に応じてメール、SMS、プッシュ通知などを自動で出し分ける仕組みです。

マルチチャネル戦略を立てる流れ

マルチチャネルマーケティングは、目的から逆算して設計します。まずは目的に合うチャネルに絞って始め、効果を見ながら広げます。

  1. 1

    目的を決める

    新規獲得、購入促進、休眠復帰などから、今回の目標を1つ選びます。例えば「期間限定の新商品案内」なら、期間内の購入を成果とし、評価期間と集計対象を先に決めます。
  2. 2

    対象ユーザーを整理する

    新規ユーザー、既存顧客、休眠ユーザーなどを分け、使える接点と配信の同意を整理します。新商品を案内する例では、SNSの閲覧者と、メール配信に同意した会員を区別し、配信・停止を管理する担当も決めます。
  3. 3

    顧客行動に合わせてチャネルを選ぶ

    対象者が利用できる接点から、主チャネルと必要な補助チャネルを選びます。新商品案内ではSNS投稿と会員メールを別々の入口として、対象に応じて並行して運用できます。
  4. 4

    メッセージと配信タイミングを決める

    特典・対象商品・期限はそろえ、情報量や表現は各媒体に合わせます。新商品案内もSNS投稿とメールを並行して実施できます。まず複数チャネルで始め、行動に応じた追加案内が必要な場面だけ連携させます。
  5. 5

    配信頻度と重複を管理する

    追加案内の対象、頻度、終了条件、例外を決めます。未購入者への追加案内には、同じ人を識別できるIDと購入イベント、または更新済みの対象者リストが前提です。配信直前に購入・停止状況を反映できるか、誰が更新・停止するかも決めます。
  6. 6

    結果を見て改善する

    配信数・反応と、目標にした購入などの成果を分けて見ます。CVRを比べるときは対象・分母・評価期間をそろえ、配信停止や苦情、配信費・制作運用費も併せて評価します。

チャネルごとの反応人数やコンバージョン数をそのまま足すと、同じ人を重複して数えるおそれがあります。注文IDや目標イベントを照合できる場合に限り、決めた単位で重複を除きます。対象者をつなげられない場合は、チャネルごとの結果として評価し、ユーザー単位の横断効果までは判断しません。

メールの開封・クリックは、実際に読まれたことや購入の証明にはなりません。配信ツールの「配信済み」が、メールサーバーへの到達と受信箱への到達のどちらを指すかも確かめます。

例えば、クリックはあっても期間内の購入が少なければ、まず商品ページや特典条件を点検します。観測した売上は、その施策だけで増えた売上とは限りません。詳しい集計・評価はMAの効果測定方法で解説しています。

マルチチャネル導入時の確認事項 導入前の確認事項

行動データをまだ連携できない場合は、担当者が購入済み・停止希望の対象を対象者リストから除いて運用できます。配信前に最新状態へ更新できないときは、未購入者だけに自動配信できるとは限らないため、対象や追加案内の実施を見直します。

マルチチャネルキャンペーンの設計例

ここでは、期間限定の新商品案内を設計します。前述の6つの手順を具体化した設計例です。目標は期間内の購入とし、同じ商品・特典・期限を各媒体で案内します。

接点・判断 対象と役割 実施条件・終え方
SNS投稿 閲覧者に新商品を知らせ、商品ページへ案内 特典・期限をLPと統一。閲覧だけでメール・SMSの対象にはならない
会員向けメール 有効な連絡先と販促配信の同意がある会員へ詳細を案内 SNSとは別の入口として配信する
必要な場合の追加案内 未購入で配信可能な人のうち、必要な人へSMSかプッシュ通知で期限を案内 ID・購入イベントか、手動更新の対象者リストが前提。同意・通知設定も確認
終了・対象除外 期限到来・購入・案内不要・停止希望で追加配信を終える 担当者が配信前に対象者リストと購入・停止を照合。自動化時も同条件をテスト
結果の評価 評価期間内の購入を集計し、配信・反応と分けて見る 会員メール購入率は配信対象会員が分母。注文ID照合時のみ注文数の重複を除く

購入データで次の配信対象を変える部分は、独立した運用から一部を連携させるクロスチャネルの取り組みです。手動でも実施できますが、更新できないデータでは、購入済みの人を自動で除外できません。評価には配信停止・苦情・配信費・制作運用費も含めます。

カゴ落ちやアプリ休眠復帰でも、利用できる接点と行動データから追加案内の要否を決めます。一定の順序で全チャネルへ送るのではなく、購入・再訪問を把握できたら、その目的の案内を止める設計にします。

購入後フォローのうち、関連商品の案内は販促です。注文確認・発送通知や純粋な予約確認は取引上の通知、OTP(ワンタイムパスワード)は認証用途として分け、販促キャンペーンとは別に管理します。

マルチチャネルマーケティングツールを選ぶポイント

対象者が少なく、配信日や対象者リストを担当者が更新できる施策なら、まず手動で管理できます。対象・頻度・条件が繰り返し変わる場合や、チャネル間の重複管理が難しい場合は、MAなどのツールを検討します。

  • メール、SMS、プッシュ通知、WhatsAppなど必要なチャネルに対応しているか
  • 顧客属性や行動履歴に応じてセグメント配信できるか
  • 登録、購入、予約、ログインなどのユーザーイベントを連携し、ワークフローやMAのトリガー、条件分岐、セグメント条件として活用できるか
  • チャネル別の到達率、クリック率、CVR、配信停止率に加え、リード獲得数や購入・予約などの成果を確認できるか
  • EC、アプリ、CRM、会員管理システムとの連携に、どの設定・開発・運用担当が必要か
  • 海外ユーザーや訪日客向けのチャネルにも対応できるか

自動化を選ぶ場合も、使うユーザー識別子、行動イベント、配信の同意や停止状態を先に整えます。シナリオの組み方はMAシナリオの設計手順を参照してください。

EngageLabでマルチチャネル施策を運用する

複数チャネルで行動に応じた追加案内を管理したい場合は、当社のEngageLab MA(マーケティングオートメーション)が選択肢です。ユーザージャーニーで、イベント、待機、条件分岐、メッセージ配信を組み合わせます。対応するチャネルは、アプリプッシュ通知、Webプッシュ通知、メール、SMS、WhatsAppです。

利用前にユーザー識別子・イベント・チャネルを設定し、配信の同意と停止条件を管理します。必要な場面だけをつなぐ仕組みのため、使うイベントと対象者を決めてから設定します。

BtoBの見込み顧客フォローなら、連絡に同意した見込み顧客に歓迎メールを送り、一定期間待つ設計ができます。資料ページの訪問などを同じ人のイベントとして取り込める場合は、その行動を条件に追加案内を分岐します。追加案内が必要な対象には、利用条件を満たすWhatsAppまたはSMSが選択肢です。

MAは待機・条件分岐・配信を担います。追加案内の前に担当者が返信・停止状況を確かめ、不要な配信を止めます。商談意向の判断と営業への引き継ぎも担当者が行います。行動データを取り込めない場合は、担当者が更新した対象者リストを使います。

以下は、離脱ユーザーへの再案内の設定途中の画面例です(「下書き」「未設定」のノードを含みます)。

EngageLabのマルチチャネルMAワークフロー画面(設定途中の画面例)

実際の運用では、自社の対象・配信条件・終了条件を設定し、送信前にテストします。

不動産業界での活用例

問い合わせ対応の例として、アクシオス・マネジメント株式会社は、Webチャット・WhatsAppからの海外の相談をAI(Aurora Mobileグループの独立製品GPTBots.ai)で整理し、EngageLab LiveDeskで営業担当へ引き継ぐ体制を作りました。

Aurora Mobileの発表では、導入1週間で3件の管理契約につながったとしています。

詳しくは不動産の問い合わせ対応と有人連携をご覧ください。

複数チャネルの継続フォローを検討する場合は、使うイベントや対象者データを整理してから、MAの設定・運用範囲をご相談ください。

まとめ

マルチチャネルマーケティングは、複数の接点を独立して運用するところから始められます。まずは目的と対象を絞り、必要な接点で小さく試しましょう。行動に応じた追加案内が必要になったら、識別できるデータと配信条件を整え、一部の連携へ進みます。

次の施策では、1つの目標、配信できる対象、終了条件、評価期間を先に決めます。反応だけでなく、重複を除ける成果と運用の負担を見て、続ける接点や連携の要否を判断してください。

よくある質問

マルチチャネルマーケティングとは何ですか?

マルチチャネルマーケティングとは、複数のチャネルを使い、顧客に商品・サービス・情報を届けるマーケティング手法です。Webサイト、SNS、メール、SMS、プッシュ通知、実店舗などを使います。マルチチャネルの段階では、各チャネルを独立して運用し、顧客データや管理はまだつながっていません。

オムニチャネルとの違いは何ですか?

マルチチャネルは、複数のチャネルを独立して運用する考え方です。オムニチャネルは、複数のチャネルを連携させ、どの接点でも一貫した顧客体験を提供する考え方です。違いはチャネルの数ではなく、チャネル同士の連携度合いにあります。

マルチチャネルマーケティングのメリットは何ですか?

主なメリットは、顧客との接点を増やせること、単一チャネルでは届きにくいユーザーにアプローチできること、顧客の行動や好みに合わせてチャネルを使い分けられることです。また、チャネル別の反応を見ながら施策を改善しやすくなります。

マルチチャネルマーケティングのデメリットは何ですか?

主なデメリットは、顧客データが分断されやすいこと、同じ内容を何度も送ってしまうこと、配信頻度が増えやすいこと、運用コストや制作工数が増えることです。 チャネルごとの役割、配信対象、配信タイミングを整理して運用する必要があります。

マルチチャネルマーケティングは何から始めればよいですか?

まずは購入促進などの目標を1つ決め、既存顧客の連絡先や配信の同意、通知設定など、使える接点を整理します。担当者が対象・頻度・停止を管理できる範囲で試し、同じ評価期間で結果を比べましょう。チャネルの連携やMA導入は、必要な場面に合わせて検討します。