avatar

佐藤 健一

更新日:2026-05-09

3748 閲覧数, 5 min 読む

マルチチャネルマーケティングとは、Webサイト、SNS、メール、SMS、プッシュ通知、実店舗など、複数のチャネルを使って顧客に情報を届けるマーケティング手法です。

例えば、SNSで商品を知ったユーザーにメールで詳しい情報を送り、購入前にはSMSやプッシュ通知でリマインドする、といった使い方があります。顧客が利用しやすいチャネルに合わせて接触できる点が、マルチチャネルマーケティングの特徴です。

ただし、チャネルを増やすだけでは成果につながりません。顧客データが分断されたり、同じ内容を何度も送ってしまったりすると、かえって顧客体験を損なうこともあります。

本記事では、マルチチャネルマーケティングの意味、オムニチャネルとの違い、メリット・デメリット、戦略の立て方、実践例をわかりやすく解説します。

マルチチャネルマーケティングのポイント 先に結論

マルチチャネルマーケティングで重要なのは、使うチャネルの数ではなく、役割分担です。メールは詳しい情報提供、SMSは重要な短文通知、プッシュ通知は再訪問の促進のように、目的に合わせて使い分けることが成果につながります。

マルチチャネルマーケティングとは

マルチチャネルマーケティングとは

マルチチャネルマーケティングとは、複数の販売経路やコミュニケーションチャネルを使い、顧客に商品・サービス・情報を届けるマーケティング手法です。ECサイト、実店舗、SNS、メール、SMS、プッシュ通知、メッセージアプリ、広告などが代表的なチャネルです。

例えば、SNSで商品を知ったユーザーがWebサイトで詳細を確認し、メールでキャンペーン情報を受け取り、購入前にSMSやプッシュ通知でリマインドを受ける流れは、マルチチャネル施策の一例です。

ただし、目的はチャネル数を増やすことではありません。メールは詳しい情報提供、SMSは重要な短文通知、プッシュ通知は再訪問の促進など、チャネルごとの役割を分けることが重要です。各チャネルを別々に運用すると、顧客データや配信結果が分断されやすい点にも注意が必要です。

オムニチャネル・クロスチャネルとの違い

マルチチャネル、クロスチャネル、オムニチャネルは、いずれも複数のチャネルを扱う考え方です。違いは、使うチャネルの数ではなく、チャネル同士がどの程度連携しているかにあります。

種類 意味
シングルチャネル 1つのチャネルだけを使う 店舗のみ、ECサイトのみ、メール配信のみで運用する
マルチチャネル 複数のチャネルを使うが、個別に運用されやすい EC、SNS、メール、SMS、アプリをそれぞれ別々に運用する
クロスチャネル 複数チャネルの一部が連携している メールからアプリへ誘導する、ECで購入した商品を店舗で受け取る
オムニチャネル 主要な接点を連携し、一貫した顧客体験を提供する 店舗、EC、アプリ、会員情報、購買履歴、配信履歴がつながっている

例えば、ECサイト、SNS、メール、SMS、アプリを使っていても、顧客データや配信結果が別々に管理されていれば、マルチチャネルの状態です。メールでキャンペーンを案内し、クリックしたユーザーをアプリやECサイトに誘導するように、一部の接点が連携するとクロスチャネルに近づきます。

オムニチャネルでは、チャネルをまたいでも顧客体験が途切れにくい状態を目指します。例えば、ECで見た商品、店舗での購入履歴、アプリの利用状況、メールやプッシュ通知への反応をもとに、次の案内を出し分けるような運用です。

ただし、すべての企業が最初からオムニチャネルを目指す必要はありません。まずはマルチチャネルで接点を広げ、反応のよいチャネルを見極めたうえで、顧客データやマーケティングオートメーション(MA)を活用しながら連携を深めていく進め方が現実的です。

マルチチャネルとオムニチャネルの違い ポイント

マルチチャネルは「複数の接点を持つこと」、クロスチャネルは「一部を連携させること」、オムニチャネルは「主要な接点をつなげ、一貫した体験を作ること」です。いきなり全チャネルを統合するのではなく、自社に必要な接点から連携を進めることが大切です。

マルチチャネルマーケティングのメリット・デメリット

マルチチャネルマーケティングは、顧客との接点を増やせる一方で、運用が複雑になりやすい施策です。導入前に、得られる効果と起こりやすい課題の両方を整理しておくことが重要です。

メリット

主なメリットは、顧客が利用しやすいチャネルに合わせて情報を届けられることです。1つのチャネルだけでは接触できなかったユーザーにも、複数の接点からアプローチしやすくなります。

  • 顧客との接点を増やせる
  • 単一チャネルでは届きにくいユーザーにもアプローチできる
  • 顧客の行動や好みに合わせてチャネルを使い分けられる
  • 認知、購入、継続、休眠復帰など段階別に施策を分けられる
  • チャネル別の反応を見ながら改善できる

例えば、メールは詳しい商品説明やキャンペーン案内、SMSは予約確認や重要なお知らせ、プッシュ通知はアプリ利用促進や再訪問のきっかけ作りに向いています。チャネルごとの強みを分けることで、ユーザーにとって自然な流れで情報を届けやすくなります。

デメリット・注意点

一方で、チャネルを増やすほど、配信管理や効果測定は複雑になります。役割分担や配信ルールを決めないまま始めると、顧客体験を損なう可能性があります。

  • チャネルごとに顧客データが分断されやすい
  • 同じユーザーに似た内容を何度も送ってしまうことがある
  • 配信頻度が増え、ユーザーに負担を与える可能性がある
  • チャネルごとにKPIが異なり、全体の成果を見にくい
  • 配信コストや制作工数が増えやすい

特にメール、SMS、プッシュ通知を併用する場合は、「誰に、どのチャネルで、何を、いつ届けるか」をあらかじめ決めておくことが大切です。似た内容を何度も送ると、配信停止や通知オフにつながることもあります。

まずは目的に合うチャネルから始め、配信頻度、反応率、CVR、配信停止率などを見ながら、必要に応じてチャネルを広げていく進め方が現実的です。

主なチャネルと使い分け

マルチチャネルマーケティングでは、販売チャネルとコミュニケーションチャネルを分けて考えると整理しやすくなります。 すべてのチャネルで同じ内容を配信するのではなく、目的や顧客の状態に合わせて使い分けることが重要です。

チャネル 向いている場面 注意点
メール メルマガ、購入後フォロー、資料送付、リード育成など、詳しい情報を届けたい場面 件名、配信頻度、配信停止率、到達率を確認する
SMS 予約確認、重要通知、短文リマインド、本人確認など、短く確実に伝えたい場面 文字数、SMS料金の目安、同意取得、配信停止への対応が必要
アプリプッシュ通知 アプリ利用促進、休眠復帰、クーポン通知、機能利用の促進 通知許諾、 配信頻度、通知疲れに注意する
Webプッシュ通知 Webサイト再訪問、速報通知、キャンペーン告知、離脱後の再接触 ブラウザ対応、通知許諾、Webプッシュ関連仕様を確認する
WhatsApp 海外顧客、訪日客、越境EC、予約確認、多言語コミュニケーション 国・地域ごとの利用習慣、メッセージテンプレート、 ユーザー同意を確認する
SNS 認知拡大、キャンペーン告知、UGC促進、ブランドとの初回接点作り アルゴリズム変動、炎上リスク、効果測定の難しさがある
Webサイト / LP 商品説明、比較検討、問い合わせ、購入、予約などの受け皿 導線、CTA、フォーム、ページ速度、SEOを改善する

これらの使い分けは、チャネルごとの到達しやすさ、伝えられる情報量、ユーザーの受け取り方、配信コスト、同意管理のしやすさを踏まえて整理することが重要です。

なお、 OTPMA はチャネルそのものではなく、複数チャネルを活用するための用途・仕組みとして整理するとわかりやすくなります。 例えば、OTPはSMS、メール、WhatsAppなどを使った本人確認の仕組みであり、MAはユーザー行動に応じてメール、SMS、プッシュ通知などを自動で出し分ける仕組みです。

マルチチャネル戦略を立てる流れ

マルチチャネルマーケティングは、思いついたチャネルから配信するのではなく、目的から逆算して設計します。最初からすべてのチャネルを使う必要はありません。まずは目的に合うチャネルを選び、効果を見ながら広げていく進め方が現実的です。

  1. 1

    目的を決める

    新規獲得、購入促進、予約確認、休眠復帰、LTV向上など、何を達成したいのかを明確にします。
  2. 2

    対象ユーザーを整理する

    新規ユーザー、既存顧客、休眠ユーザー、カゴ落ちユーザー、海外ユーザーなど、状態ごとに分けます。
  3. 3

    顧客行動に合わせてチャネルを選ぶ

    比較検討にはメール、重要通知にはSMS、アプリ利用促進にはプッシュ通知など、目的に合わせて使い分けます。
  4. 4

    メッセージと配信タイミングを決める

    登録直後、購入後、予約前日、カゴ落ち後、休眠期間が続いたときなど、ユーザー行動を起点にします。
  5. 5

    配信頻度と重複を管理する

    同じユーザーに似た内容を何度も送らないように、チャネルごとの役割と配信ルールを決めます。
  6. 6

    結果を見て改善する

    開封率、クリック率、到達率、CVR、配信停止率、売上、予約数などを確認し、次の施策に反映します。

特にメール、SMS、プッシュ通知を組み合わせる場合は、「誰に、何を、どのチャネルで、いつ届けるか」を先に決めておくことが大切です。配信数を増やすよりも、顧客の行動に合ったタイミングで届けるほうが、自然なコミュニケーションにつながります。

マルチチャネル導入時の確認事項 導入前の確認事項

マルチチャネル施策を始める前に、配信目的、対象ユーザー、利用するチャネル、配信頻度、同意取得、配信停止、効果測定の方法を確認しておきましょう。特にメール、SMS、プッシュ通知、WhatsAppを組み合わせる場合は、チャネルごとのルールを分けて管理することが重要です。

マルチチャネルキャンペーンの例

ここでは、メール、SMS、プッシュ通知、WhatsAppなどを組み合わせたキャンペーン例を紹介します。実際の運用では、業種、顧客層、配信目的に合わせて内容やタイミングを調整します。

シーン チャネル例 使い方
ECのカゴ落ち Webプッシュ通知 → メール → SMS まず再訪問を促し、メールで詳細を案内し、期限前にSMSで短くリマインドする
購入後フォロー メール → SMS → プッシュ通知 注文確認や使い方はメール、発送通知や受取リマインドはSMS、関連商品の案内はプッシュ通知で届ける
アプリ休眠復帰 プッシュ通知 → メール → SMS まずアプリ再訪問を促し、反応がない場合はメールで詳しく案内し、必要な場合のみSMSで短く知らせる
予約確認 メール → SMS / WhatsApp 予約直後はメールで詳細を送り、前日にはSMSやWhatsAppで日時・場所を短く確認する
会員登録・本人確認 SMS OTP / メールOTP / WhatsApp OTP 登録、ログイン、パスワード再設定などで、ユーザーが受け取りやすい認証手段を用意する

ポイントは、すべてのチャネルで同じ内容を送らないことです。詳しい説明はメール、短い確認はSMS、行動促進はプッシュ通知、海外ユーザーとの連絡はWhatsAppのように役割を分けると、顧客にとって自然な流れになります。

マルチチャネルマーケティングツールを選ぶポイント

配信チャネルが増えると、手動管理だけでは運用が複雑になります。ツールを選ぶときは、対応チャネルの数だけでなく、顧客データ、セグメント配信、自動化、効果測定をまとめて扱えるかを確認しましょう。

  • メール、SMS、プッシュ通知、WhatsAppなど必要なチャネルに対応しているか
  • 顧客属性や行動履歴に応じてセグメント配信できるか
  • 登録、購入、予約、ログインなどのユーザーイベントを連携し、ワークフローやMAのトリガー、条件分岐、セグメント条件として活用できるか
  • チャネル別の到達率、クリック率、CVR、配信停止率に加え、リード獲得数や購入・予約などの成果を確認できるか
  • EC、アプリ、CRM、会員管理システムと連携しやすいか
  • 海外ユーザーや訪日客向けのチャネルにも対応できるか

小規模な施策であれば、まずはメールとSMS、メールとプッシュ通知のように少ない組み合わせから始めても問題ありません。顧客数や配信頻度が増えてきたら、MAやシナリオ配信を使い、ユーザー行動に合わせて自動化すると運用しやすくなります。

重要なのは、多機能なツールを選ぶことではなく、自社の顧客接点に合うチャネルを無理なく連携できることです。導入前に、どの顧客に、どのタイミングで、どのチャネルを使うのかを整理しておくと、ツール選定の失敗を防ぎやすくなります。

特に法人向けのマルチチャネル施策では、「どのチャネルを使ったか」だけでなく、「どの配信がリード獲得、購入、予約、再訪問につながったか」を確認できることが重要です。配信結果とユーザー行動をあわせて見られると、ROIを改善するための判断がしやすくなります。

EngageLabでマルチチャネル施策を運用する

EngageLabは、メール、SMS、アプリプッシュ通知、Webプッシュ通知、WhatsApp、OTP、マーケティングオートメーションを組み合わせて使えるカスタマーエンゲージメント基盤です。複数チャネルの配信だけでなく、ユーザーイベントを起点にしたワークフロー、条件分岐、セグメント配信、効果測定までまとめて設計できます。

例えば、リード獲得イベントを起点に、歓迎メールを送り、24時間以内に返信がない場合はWhatsAppやSMSでリマインドし、高意向リードを営業担当へ引き継ぐような自動フォローを設計できます。

リード獲得後に歓迎メール、未返信判定、WhatsApp・SMSリマインド、営業引き継ぎを行う自動フォローの流れ

例えば、離脱ユーザーの再エンゲージメントでは、まずメールでキャンペーン情報を届け、一定期間内に訪問がないユーザーにはSMSやプッシュ通知でリマインドし、アプリ利用者にはアプリプッシュ通知、Web訪問者にはWebプッシュ通知を出し分ける、といった設計ができます。

以下は、離脱ユーザーの再エンゲージメントを想定したマルチチャネルMAの自動化フロー例です。登録、訪問、クリック、未反応などのユーザー行動に応じて、メール、SMS、アプリプッシュ通知、Webプッシュ通知などを出し分けられます。

EngageLabのマルチチャネルMAワークフロー画面

このように、ユーザーの行動に応じてチャネルを切り替えることで、単に配信数を増やすのではなく、再訪問、リード獲得、予約完了、購入復帰などの成果につながる接点を作りやすくなります。

不動産業界での活用例

海外投資家からの問い合わせが多い不動産管理会社では、Webチャット、WhatsApp、EngageLab LiveDesk、AIエージェントを組み合わせた問い合わせ対応フローを構築できます。AIエージェントが一次対応を行い、希望条件や相談内容を整理したうえで、意欲の高い見込み顧客を営業担当へ引き継ぐ運用です。

不動産業界でAI、LiveDesk、MAを活用し問い合わせ対応から営業引き継ぎまでを支援する流れ

実際の匿名プロジェクトでは、商用開始後1週間で2名の高意向顧客から東京都心部の3物件の管理委託につながりました。年間システム投資250万円に対し、これらの管理委託による年間管理費収入見込みは90万円となり、初期1週間で年間投資額の約36%に相当する収益機会を創出できました。

このように、WebチャットやWhatsAppからの問い合わせをAIエージェントで一次対応し、意欲の高い見込み顧客を営業担当へ素早く引き継ぐことで、限られた人員でも高品質なリードを逃さず対応しやすくなります。

不動産売買仲介のように検討期間が長い領域では、MAを使って見込み顧客へ新しい物件情報を継続的に案内することもできます。短期で成約しなかった顧客を再度相談へつなげることで、リード獲得後の商談機会を広げやすくなります。

まとめ

マルチチャネルマーケティングは、Webサイト、SNS、メール、SMS、プッシュ通知、WhatsApp、実店舗など、複数のチャネルを使って顧客に情報を届ける手法です。顧客が使いやすい接点に合わせて情報を届けられる一方で、データ分断、メッセージの重複、配信頻度の増加には注意が必要です。

成果を高めるには、目的、対象ユーザー、チャネルの役割、配信タイミング、KPIを整理することが大切です。まずは自社の目的に合うチャネルから始め、反応を見ながら段階的に改善していきましょう。

よくある質問

マルチチャネルマーケティングとは何ですか?

マルチチャネルマーケティングとは、Webサイト、SNS、メール、SMS、プッシュ通知、実店舗など複数のチャネルを使い、顧客に商品・サービス・情報を届けるマーケティング手法です。顧客が使いやすいチャネルに合わせて接点を増やせる一方で、チャネルごとの役割分担が重要になります。

オムニチャネルとの違いは何ですか?

マルチチャネルは、複数のチャネルを用意する考え方です。オムニチャネルは、複数のチャネルを連携させ、どの接点でも一貫した顧客体験を提供する考え方です。違いはチャネルの数ではなく、チャネル同士の連携度合いにあります。

マルチチャネルマーケティングのメリットは何ですか?

主なメリットは、顧客との接点を増やせること、単一チャネルでは届きにくいユーザーにアプローチできること、顧客の行動や好みに合わせてチャネルを使い分けられることです。また、チャネル別の反応を見ながら施策を改善しやすくなります。

マルチチャネルマーケティングのデメリットは何ですか?

主なデメリットは、顧客データが分断されやすいこと、同じ内容を何度も送ってしまうこと、配信頻度が増えやすいこと、運用コストや制作工数が増えることです。 チャネルごとの役割、配信対象、配信タイミングを整理して運用する必要があります。

マルチチャネルマーケティングは何から始めればよいですか?

まずは目的を決め、自社の顧客がよく使うチャネルを確認します。詳しい情報を届けたい場合はメール、予約確認や重要通知にはSMS、アプリ利用促進にはプッシュ通知、海外ユーザーとの連絡にはWhatsAppが向いている場合があります。最初からすべてのチャネルを使うのではなく、目的に合う2〜3チャネルから始めると運用しやすくなります。