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佐藤 健一

更新日:2026-10-09

読了目安:10分

BIMIとは、ドメインのなりすまし対策に使うDMARCなどのメール認証に合格したメールに、送信元のブランドロゴを表示するための仕組みです。受信トレイに企業やサービスのロゴが表示されるため、受信者が差出人を見分ける手がかりになります。

ただし、BIMIはメールの真偽を単独で証明するものではありません。導入時は、送信ドメイン認証を整え、BIMI用のSVGロゴとBIMIレコードを準備します。さらに、対象の受信環境に応じて、ロゴの権利・使用実績や送信ドメインとの関係を第三者が確認するVMC・CMCなどの証明書を用意します。設定が正しくても、最終的な表示は受信側メールサービスの判断に委ねられます。

先に結論 先に結論

BIMIの導入可否を判断するときは、最初にロゴを表示したい受信環境を決めます。そのうえで、メール認証の適用状況、ロゴの権利と必要な証明書、BIMI用ロゴ、DNS設定の準備状況を確認します。Gmail、Apple Mailなどでは条件が異なるため、共通の設定だけで一律に表示されるとは限りません。

BIMIとは何かを示すブランドロゴ表示のイメージ

BIMIとは

BIMIは「Brand Indicators for Message Identification」の略称です。送信ドメインの所有者が、ロゴや証明書の参照先を示すBIMIレコードをDNSに公開し、受信側のメールサービスがメール認証と自社の表示条件を確認したうえで、差出人の近くにロゴを表示します。

SPFは送信元IPアドレスが許可されているかを確認し、DKIMは電子署名によって送信元ドメインと改ざんの有無を確認します。DMARCは、その認証結果と受信者に表示されるFromドメインの一致を確認し、不合格メールの扱いを定めます。BIMIはこれらを置き換える認証方式ではなく、メール認証を土台としてブランドを視覚的に示すための仕組みです。

BIMIでブランドロゴが表示される仕組み

受信側のメールサービスは、まずメールがDMARCに合格しているかを確認します。次に、送信元として表示されるFromドメインに対応するBIMIレコードを参照し、SVGロゴや証明書を検証します。条件を満たした場合でも、ドメインの評価や受信側のポリシーを含めて、ロゴを表示するかどうかを受信サービスが最終判断します。

BIMI導入前後でメールのブランドロゴ表示が変わるイメージ

この図はロゴ表示の違いを示すイメージです。ロゴは認証を土台とする表示シグナルですが、表示されていることだけでメール本文やリンクの安全性が保証されるわけではありません。

BIMIを導入するメリットと注意点

  • 期待できること:受信トレイでブランドを識別しやすくし、公式メールを見分けるための視覚的な手がかりを増やせます。請求、認証、重要なお知らせなどでは、受信者が差出人をすばやく確認しやすくなります。導入準備を通じて、送信ドメインや認証状態を見直す機会にもなります。
  • できないこと:BIMIだけで送信元の真偽を証明したり、フィッシングを完全に防いだりすることはできません。ロゴ表示、メールの到達、受信トレイへの振り分け、開封率も保証されません。

BIMI導入の条件と確認基準

BIMIの準備は、担当部門ごとに分けると進めやすくなります。次の表では、設定値の有無だけでなく、次の工程へ進める状態を「合格基準」として整理しています。

条件 合格基準 主な担当 次の対応
送信ドメインと送信経路 受信者に表示される差出人アドレスのドメイン(Fromドメイン)と、利用中の正規の送信サービスを把握している メール運用・システム 未把握の送信経路を含めて棚卸しする
DMARC 正規メールが、Fromドメインと一致(アラインメント)したSPFまたはDKIMによってDMARCに合格する。対象環境が求める適用ポリシーも満たす システム・DNS管理者 レポートと実メールのヘッダーで確認する
ロゴファイル

BIMIの要件に合う正方形のSVG Tiny PSロゴを用意する。公開するファイルは対象の受信サービスと証明書の方式に応じて決め、SVGを単独公開する場合はHTTPSで取得でき、image/svg+xmlで応答することを確認する

ブランド・Web管理者 ロゴを安全化し、採用する方式に応じてSVGまたはPEMの公開URLを用意する
商標・証明書 目標の受信環境と期待する表示結果に対して、VMC・CMCまたは別の証明方法の要否を確認している ブランド・法務・証明書発行機関 権利資料と証明書の取得可否を確認する
BIMIレコードと公開ファイル 指定したセレクター(BIMIレコードを識別する名前)でFromドメインを照会し、レコードが見つからない場合は同じセレクターで組織ドメインを照会する。有効なBIMI TXTレコードが1件取得でき、参照先のファイルを外部から取得できる DNS・Web管理者 DNS、HTTPS、MIME、証明書チェーンを検証する
対象の受信環境 利用者のメールサービス、アカウント、必要に応じてクライアントとOSまで特定している メール運用 環境ごとの表示条件と受入基準を決める

対象の受信環境を先に確認する

BIMIの要件は、受信サービスによって異なります。次の表は、主要な環境について2026年10月時点の公式情報をまとめたものです。実装前と公開前に、リンク先の最新要件を再確認してください。

受信環境 ロゴ・証明の要点 検証時の注意
Gmail ロゴとVMCまたはCMCの情報を含むPEMファイルが必要。VMCは認証チェックマークの対象になり、CMCはロゴ表示の対象になるが同じチェックマークは付かない Google独自のDMARC条件も満たす。条件を満たしても、すべてのメールで表示される保証はない
Apple Mail ロゴの権利や送信ドメインとの関係を示す証明文書(BIMI Evidence Document)としてVMCなどを利用。iOS 16、iPadOS 16、macOS Ventura 13以降とiCloud.comが対象 送信側だけでなく、利用者のメールサービスも要件を満たす必要がある。Appleの公開ページだけではCMCの受入範囲を断定できない
Yahoo / AOL(英語) Yahoo Inc.独自の資格、認証、ドメイン評価などの条件がある Yahoo! JAPANは別サービスであり、Yahoo Inc.の公式FAQ(英語)でも区別されている。Yahoo/AOLの条件をそのまま適用できない
その他 対象サービスの公式送信者向け資料で、証明書やロゴの要件を確認する 公式情報を確認できない場合は、対応を前提にせず受入基準から外す

DMARCの合格条件とFromドメインとの一致

1通のメールがDMARCに合格するには、受信者に表示されるFromドメインと一致したSPF、または同じく一致したDKIMのいずれかが合格する必要があります。SPFとDKIMを両方整備することは運用上重要ですが、DMARCのメッセージ単位の判定を「両方が同時に必須」と考えるのは正確ではありません。

現行のDMARC仕様である RFC 9989 では、旧仕様にあったpctが削除されています。一方、 GoogleのBIMI要件 は2026年10月時点でも、p=quarantineまたはp=rejectとpct=100を求めています。これはGmailで表示するための現在の互換条件であり、DMARC全体の共通要件ではありません。

ポリシーを強める前に、すべての正規送信経路を棚卸しし、DMARCレポートで影響を確認します。サブドメインから送信する場合は、組織ドメインのspを含め、実際に適用されるポリシーも確認してください。SPF・DKIM・DMARCの設定と確認方法は「送信ドメイン認証とは?SPF・DKIM・DMARCの違いと確認方法」で詳しく解説しています。

VMC・CMCと商標登録、費用の考え方

BIMIを導入するすべての企業に、同じ証明書や商標登録が必須になるわけではありません。最初に対象の受信環境を決めます。Gmailを対象にする場合は、ロゴだけを表示したいのか、認証チェックマークまで必要なのかも判断し、その結果から証明書を選びます。

VMCとCMCの違い

VMC(Verified Mark Certificate)とCMC(Common Mark Certificate)は、ロゴの権利や使用実績、送信ドメインとの関係を第三者が確認する証明書です。いずれも一つの権利要件だけを指す名称ではありません。次の表では、代表的な証明書の区分(プロファイル)と、Gmailでの表示結果の違いを比較します。

判断項目 VMC(登録商標などを根拠とする証明書) CMC(継続使用の実績なども扱う証明書)
ロゴの権利基盤 Registered Markでは、認められた商標機関で確認できる登録商標を使用する Prior Useでは、未登録でも継続して公開使用してきたことを証明できるロゴを使用する
Gmailのロゴ 現在の要件を満たせば表示対象 現在の要件を満たせば表示対象
Gmailの認証チェックマーク 現在は対象 現在は対象外
選ぶ前の確認 利用する証明書区分、商標・標章の状態、権利者・ライセンス関係と、ロゴ表現の一致 利用する証明書区分に必要な証拠と、対象サービスがそのCMCを受け入れるか

表の内容は2026年10月時点のMark Certificate RequirementsとGoogleの公開情報に基づきます。現行要件では、VMCにRegistered MarkとGovernment Mark、CMCにPrior Use、Modified Registered Mark、Provisional Markの各プロファイルがあります。発行可能なプロファイルと受信サービスの受入条件は、証明書発行機関と対象サービスの最新情報を確認してください。証明書が有効でも、すべての受信サービスで同じ表示結果になるとは限りません。

商標登録が必要になるケース

VMCのRegistered Markプロファイルを選ぶ場合は、通常、認められた商標機関のデータベースで確認できる登録商標が必要です。一方、CMCのPrior Useプロファイルは、未登録でも継続使用を証明できるロゴに使える代表的な選択肢です。CMCにはほかのプロファイルもあるため、商標の有無だけで証明書を一対一に決めることはできません。すべての受信サービスが各プロファイルを受け入れるわけではなく、証拠の内容も証明書発行機関の審査を受けます。

CMCのPrior Useプロファイルでは、申請時に申請者が管理するWebサイト上でロゴが表示されており、同じロゴが少なくとも12か月前にも同一ドメインのWebサイト上に表示されていたことを、認められたWebアーカイブで確認できる必要があります。

商標の出願・登録を検討する場合は、区分、権利者、使用するロゴとの一致、利用地域を確認します。日本での手続料金は特許庁の料金一覧で確認できますが、これはBIMIの総費用ではありません。具体的な権利判断は、知的財産の専門家と証明書の発行機関に確認してください。

導入費用を左右する項目

BIMIの費用は、証明書の価格だけでは決まりません。主に次の作業と継続運用から構成されます。

  • 送信経路の棚卸し、SPF・DKIM・DMARCの整備とレポート監視
  • SVG Tiny PSロゴの制作・調整、採用する方式に応じたSVG・PEMファイルの公開と保守
  • 選択した証明書に応じた商標・権利資料の準備
  • VMCまたはCMCの審査、発行、更新
  • DNS設定、テスト送信、対象環境ごとの検証と運用

2026年10月時点のMark Certificate要件では、証明書の有効期間は最長398日です。そのため、初回導入費だけでなく、更新費用と担当者の運用工数も見積もります。DMARCの成熟度や権利資料の準備状況によって期間が変わるため、一律の価格や導入日数では判断できません。

BIMIの設定方法:準備・公開・検証

BIMIの設定は、次の4段階で進めます。証明書やDNSから始めるのではなく、送信ドメインと対象環境を先に確定すると、手戻りを減らせます。

  • 1

    対象の送信ドメインとセレクターを決める

    受信者に表示されるFromドメインと、そこから送るすべての正規メールを確認します。実メールでDMARCの合格とFromドメインとの一致を検証し、対象の受信サービスが求めるポリシーまで満たします。BIMIレコードは<selector>._bimi.<Fromドメイン>に置き、カスタムセレクターを使わない場合はdefault._bimi.example.comが一般的です。

    BIMIの参照手順では、送信サブドメイン側に同じセレクターの有効なレコードがない場合、同じセレクター名で組織ドメイン側のレコードを検索します。たとえば、Fromドメインがmail.example.comでdefault._bimi.mail.example.comにレコードがなければ、default._bimi.example.comが照会されます。複数の送信サブドメインを使う場合は、組織ドメインでの共通設定とサブドメインごとの個別設定のどちらが必要かを整理してください。

  • 2

    ロゴと必要な証明書を準備する

    正方形のSVG Tiny PSロゴを用意し、スクリプトや外部参照を除きます。対象がGmailの場合など、証明書が必要な環境では、商標や使用実績に応じてVMC・CMCの取得可否を証明書発行機関に確認します。

  • 3

    ファイルを公開し、BIMIレコードを設定する

    SVGロゴや、証明書情報を含むPEMファイルをHTTPSで公開し、DNSにBIMI TXTレコードを1件だけ設定します。v=BIMI1は先頭に置きます。次の値は用途の違いを示す例であり、すべての受信サービスに共通するテンプレートではありません。

    自己申告型SVGの例(Gmailではこの形式だけでは表示されません)

    v=BIMI1; l=https://assets.example.com/bimi/logo.svg

    Googleが現在示すVMC・CMC用レコードの例

    v=BIMI1; l=; a=https://assets.example.com/bimi/certificate.pem

    l=とa=の使い方は、対象の受信サービスと証明書発行機関の最新手順を優先してください。

  • 4

    DNS・ファイル・証明書・テストメールを検証する

    まずDNS上のホスト名(レコード名)とTXT値を確認し、次にHTTPSでの取得可否、MIMEタイプ、SVGの形式、PEMファイルの証明書チェーンと有効期限を検証します。その後、実際の送信経路からテストメールを送り、DMARCの合格とFromドメインとの一致を確認します。ここまで合格しても、ロゴ表示は別の検証項目です。対象アカウントとクライアントで最終確認してください。

BIMIロゴが表示されない場合の確認順

ロゴが表示されないときは、受信アプリだけを切り替えるのではなく、送信側から順に確認します。途中で不合格が見つかった場合は、修正後に同じ送信経路から再テストします。

  • 1

    テストメールがDMARCに合格しているか

    メールヘッダーでDMARCに合格していることと、SPFまたはDKIMの認証ドメインがFromドメインと一致していることを確認します。不合格なら、メール運用・システム担当が送信経路とFrom設定を修正します。
  • 2

    BIMIレコードの場所と値が正しいか

    セレクター、Fromドメイン、v=BIMI1の位置、TXTレコードの重複をDNS担当が確認します。送信サブドメイン側に同じセレクターの有効なレコードがない場合は、組織ドメイン側に対応するレコードがあるかも確認します。意図しない別のサブドメインにだけ置かれていないかも確認してください。

  • 3

    SVG・PEMを外部から取得できるか

    HTTPSで認証なしに取得できること、正しいContent-Type(MIMEタイプ)で応答すること、リダイレクトやアクセス制限が検証を妨げていないことをWeb担当が確認します。
  • 4

    ロゴと証明書が要件を満たしているか

    SVGの形式、証明書チェーン、有効期限、対象ドメイン、証明書内のロゴとの一致をブランド担当と証明書発行機関が確認します。
  • 5

    受信サービスとアカウントが対象か

    証明書の種類、DMARCポリシー、送信量やドメイン評価など、対象サービス独自の条件を確認します。DNSと証明書が正しくても、受信側の条件で表示されない場合があります。
  • 6

    クライアントとOSの条件を満たしているか

    特にApple Mailでは、アカウントのメールサービスを確認した後に、利用中のアプリとOSのバージョンを確認します。
  • 7

    反映、キャッシュ、ドメイン評価の影響を確認する

    変更の反映状況や受信側のキャッシュ、送信ドメインの評価を継続して観測します。固定の待ち時間を前提にせず、対象サービスの公式トラブルシューティングに従います。

EngageLabでBIMI対応メールを運用する

EngageLab Emailでは、自社の送信ドメインを登録し、SPF・DKIM・MX・DMARCの設定値と状態を確認できます。表示上の差出人(From)や配送上の送信元(Mail From)を含む送信設定も管理できます。具体的な設定項目は送信設定のドキュメントを参照してください。

EngageLabのテスト送信機能では、メールテンプレートまたはカスタムコンテンツを使ってテストできます。操作方法はメール送信関連のドキュメントで確認できます。その後、APIまたはSMTPによる実際の送信経路からもメールを送り、BIMIの前提となる送信経路を確認します。

送信・配信状況、バウンス、受信ドメイン、受信トレイへの振り分け状況(Inbox Placement)などのデータは、メール運用の観測に役立ちます。一方、SVGロゴ、商標・権利資料、VMC・CMC、BIMI TXTレコード、SVG・PEMの公開には、ブランド・法務、証明書発行機関、DNS・Web管理者との連携が必要です。これらの送信・配信データだけではBIMIロゴや認証チェックマークの表示を確認できないため、最終表示は対象の受信サービスとアカウントで確認します。

BIMIに関するよくある質問

BIMIには商標登録が必須ですか?

すべてのBIMI実装で商標登録が必須とは限りません。ただし、VMCのRegistered Markプロファイルを取得する場合は、通常、認められた商標機関で確認できる登録商標が必要です。未登録ロゴではCMCのPrior Useプロファイルが候補になる場合がありますが、CMCにはほかのプロファイルもあります。商標やロゴの状態、必要な証拠、対象の受信サービスの受入条件を証明書発行機関に確認してください。

設定が正しくてもロゴが表示されないことはありますか?

あります。DNS、SVG、証明書、テストメールのDMARCがすべて合格しても、受信サービスの表示ポリシー、ドメイン評価、利用者のアカウントやクライアント条件によって表示されない場合があります。送信側の検証と受信側の表示確認を分けてください。

Apple MailやiPhoneで表示されない場合は何を確認しますか?

まず、Apple Mailで利用しているメールアカウントの受信サービスがBIMIの要件を満たしているかを確認します。次に、iOS 16、iPadOS 16、macOS Ventura 13以降など、Appleが案内するクライアントとOSの条件を確認します。「iPhoneでApple Mailを使っている」ことだけでは表示条件を満たしません。

BIMIの導入費用はいくらですか?

一律の金額はありません。メール認証の整備、SVG制作、商標・権利資料、VMC・CMCの発行と更新、DNS・HTTPSの運用、対象環境でのテスト工数によって変わります。証明書の見積もりだけでなく、更新と継続監視を含む総費用で比較してください。

まとめ

BIMIとは、DMARCなどのメール認証を前提に、対応する受信環境でブランドロゴを表示するための仕組みです。ブランドを見分ける手がかりになりますが、独立した安全証明ではなく、ロゴ表示やメール到達を保証するものでもありません。

導入時は、対象の受信サービスを先に決め、送信経路とDMARC、SVGロゴ、VMC・CMCと商標、BIMIレコードを順に確認します。公開後は、DNS・ファイル・証明書・テストメールの合格と、実際のロゴ表示を別々に検証することが重要です。