アプリ分析では、ダウンロード数だけで成果を判断しないことが重要です。自社アプリの目的に合わせて、DAU・WAU・MAUなどのアクティブユーザー数、リテンション率、イベント、離脱率、コンバージョン率を組み合わせると、課題が獲得・利用・継続・成果のどこにあるかを整理しやすくなります。
アプリを公開した後は、何人がインストールしたかだけでなく、その後も利用されているか、主要な機能が使われているか、会員登録・購入・予約などの目的行動につながっているかを確認する必要があります。
この記事では、企業が運営する自社アプリを対象に、アプリ分析の種類、見るべきKPI・指標、利用状況とユーザー行動の確認方法、分析結果を改善施策につなげる流れを解説します。アプリ分析ツールの比較やおすすめ製品の紹介ではなく、まず何を分析し、どう判断するかを整理します。
アプリ分析とは
アプリ分析とは、アプリの利用状況やユーザー行動をデータで確認し、改善する場所と優先順位を決める取り組みです。ダウンロード数、アクティブユーザー数、画面閲覧、イベント、離脱率、リテンション率、コンバージョン率などを、自社アプリの目的に合わせて確認します。
例えば、ダウンロード数が増えていても、初回起動後に利用が続いていなければ、オンボーディングや主要機能への導線を見直す必要があります。商品詳細ページまでは見られているのに購入へ進まない場合は、価格や配送情報、カート追加ボタン、ログイン・決済手順などを順に確認します。
取得できるデータや指標の定義は、利用する分析基盤、計測設定、ユーザーの同意状況、OSやアプリストア側の仕様によって異なります。最初からすべての数値を追うのではなく、アプリの目的と改善したい課題を決めてから、必要なKPI・指標を選ぶことが大切です。
アプリ分析の主な種類
アプリ分析で見るべき内容は、改善したい課題によって変わります。自社アプリの利用状況を改善したいのか、広告効果を見直したいのか、他社アプリを含む市場動向を把握したいのかを分けると、必要なデータを選びやすくなります。
| 分析の種類 | 確認すること | 向いている目的 |
|---|---|---|
| 利用状況分析 | DAU・WAU・MAU、セッション数、リテンション率など | アプリがどの程度継続して使われているかを確認する |
| ユーザー行動・ファネル分析 | 画面遷移、タップ、検索、カート追加、購入、離脱など | ユーザーが止まっている画面や手順を特定する |
| マーケティング・広告効果分析 | 流入元、広告別の獲得数、CPI、CAC、LTVなど | ユーザー獲得施策や広告予算を見直す |
| 市場・競合分析 | 他社アプリの推定利用状況、ストア順位、レビュー、カテゴリ動向など | 市場ポジションや競合動向を把握する |
この記事では、自社アプリの改善に直接つながる利用状況分析とユーザー行動・ファネル分析を中心に扱います。広告効果や市場・競合の分析は目的が異なるため、同じ指標や数値をそのまま比較しないことが重要です。
アプリ分析で見るべきKPI・指標
アプリ分析では、すべての指標を同じ重みで追うのではなく、目的に合ったKPIを選ぶことが重要です。KPIは、売上や会員数などの最終目標に向けて、途中の進み具合を確認するための指標です。
まず、アプリの目的を「獲得」「利用状況」「継続」「行動」「成果」に分けます。そのうえで、課題のある段階に対応するKPIを選ぶと、数値を確認した後の行動を決めやすくなります。
| 確認する目的 | 主なKPI・指標 | 判断したいこと |
|---|---|---|
| 新規ユーザーを獲得する | ダウンロード数、インストール数、CPI、CAC | 獲得数と費用のバランスが取れているか |
| 利用状況を把握する | DAU、WAU、MAU、アクティブ率 | 想定した頻度でアプリが使われているか |
| 継続利用を確認する | リテンション率、休眠ユーザー数、チャーン率 | どの時点で利用が減り、休眠・離脱しているか |
| アプリ内行動を改善する | セッション数、イベント数、離脱率 | どの画面や手順で重要な行動が止まっているか |
| 成果や収益を確認する | CVR、課金率、ARPU、LTV | 利用が登録・購入・予約・課金につながっているか |
獲得の指標:ダウンロード数・インストール数・CPI・CAC
ダウンロード数やインストール数は、新規ユーザーをどの程度獲得できたかを見る基本指標です。広告を利用している場合は、1件のインストールにかかった費用を示すCPIや、顧客獲得にかかった費用を示すCACも確認します。
ただし、獲得単価が低くても、その後に主要機能が使われず、継続利用や購入につながっていなければ、事業上の成果とはいえません。流入元別に初回行動、リテンション率、CVRまで確認すると、獲得施策の質を判断しやすくなります。
利用状況の指標:アクティブユーザー数(DAU・WAU・MAU)・アクティブ率
アクティブユーザー数は、一定期間内にアプリを利用したユーザー数です。日単位はDAU、週単位はWAU、月単位はMAUで確認します。毎日使うことが想定されるアプリではDAU、週に数回使うアプリではWAU、月単位で利用機会があるアプリではMAUが判断材料になります。
| 指標 | 確認する期間 | 向いている判断 |
|---|---|---|
| DAU | 1日以内に利用したユーザー数 | 日常的に利用されているか |
| WAU | 1週間以内に利用したユーザー数 | 週単位の利用習慣があるか |
| MAU | 1か月以内に利用したユーザー数 | 月間の利用規模と長期的な推移 |
アクティブユーザー数が「人数」を示すのに対し、アクティブ率は、登録ユーザー数やインストール数など自社で定めた母数に対して、実際に利用したユーザーが占める割合です。母数の定義をそろえないまま比較すると判断を誤るため、社内で計算条件を統一しておきましょう。
DAU・WAU・MAUが下がった場合は、数値だけで原因を決めず、初回起動後の離脱、主要イベントの実行率、リテンション率、休眠ユーザー数を確認します。また、アクティブユーザーの定義はツールによって異なるため、ユーザー・アカウント・デバイスのどの単位で集計しているかを確認する必要があります。
継続の指標:リテンション率・休眠ユーザー数・チャーン率
リテンション率は、アプリを使い始めたユーザーが、一定期間後も利用している割合です。翌日、7日後、30日後など、アプリの利用頻度に合う期間を設定し、同じ時期に利用を始めたユーザーのグループごとに比較します。
リテンション率が下がっている場合は、初回体験、主要機能への到達、エラーや表示速度、通知許可後の体験などを確認します。休眠ユーザー数が増えている場合も、すぐに通知施策だけを追加するのではなく、最後に利用した機能や離脱前の行動から原因を切り分けることが重要です。
チャーン率やアンインストール数を確認する場合は、利用停止の定義と集計期間をそろえます。休眠状態と解約・アンインストールでは、再訪問を促す施策や改善すべき機能が異なります。
行動の指標:セッション数・イベント数・離脱率
セッション数は利用回数、イベント数は検索・タップ・お気に入り登録・カート追加・購入など、アプリ内で発生した行動を確認する指標です。平均利用時間が長くても、目的の操作で迷っている可能性があるため、長さだけで良し悪しを判断しません。
離脱率は、会員登録、購入、予約などの手順ごとに確認します。例えば、商品閲覧からカート追加への移行が少ない場合と、決済直前で離脱が多い場合では、見直す画面や情報が異なります。アプリの目的に直結するイベントを先に定め、必要な範囲から計測を始めると運用しやすくなります。
成果の指標:CVR・課金率・ARPU・LTV
アプリが会員登録、購入、予約、問い合わせ、課金などを目的としている場合は、成果に直結する指標を確認します。CVRは対象ユーザーのうち目標行動を完了した割合、課金率は対象ユーザーのうち課金した割合です。
ARPUは一定期間におけるユーザー1人あたりの平均収益、LTVは利用期間を通じて1人の顧客がもたらす価値を示します。広告収益型、都度課金型、サブスクリプション型では計算条件が異なるため、自社の収益モデルに合わせて定義します。
自社アプリの利用状況・ユーザー行動を確認する方法
自社アプリの利用状況は、アプリストアの管理画面、Firebase/Google Analytics、自社の分析基盤やCRMなどで確認します。確認したい内容に応じて、見るデータを使い分けることが重要です。
ここでいう利用状況の確認は、スマートフォン利用者が端末の設定画面でアプリの使用時間を調べる方法ではありません。企業の運用担当者が、自社アプリの獲得、利用、継続、行動、成果を分析するための確認方法を指します。
すべてを最初から計測するのではなく、まずは事業目標に直結するユーザー行動から確認します。必要な指標を絞ることで、運用担当者が数値を追う負担を抑えながら、改善すべき箇所を判断しやすくなります。
| 確認方法 | 主に確認できること | 向いている用途 |
|---|---|---|
| Google Play Console | インストール、ストア経由の成果、Androidアプリの公開後の状況 | Androidアプリの獲得や基本的な状態を確認する |
| App Store Connect | インプレッション、プロダクトページ閲覧、ダウンロード、セッションなど | iOSアプリの獲得・利用状況を確認する |
| Firebase/Google Analytics | イベント、ユーザー行動、エンゲージメント、リテンションなど | アプリ内の行動やファネルを詳しく分析する |
| 自社の分析基盤・CRM | 会員情報、購入履歴、課金状況、施策への反応など | アプリ内行動と顧客・取引データを結びつける |
複数の管理画面や分析ツールを使う場合は、同じ名前の指標でも集計条件が異なることがあります。社内レポートを作成する前に、対象期間、ユーザーの識別方法、イベントの発生条件をそろえておくと、数値のずれを説明しやすくなります。
アプリ行動分析で見るべきポイント
アプリ行動分析では、利用者数だけでなく、ユーザーがどの画面を見て、どの操作を行い、どの手順で離脱したかを確認します。重要な行動を時系列で見ると、数値が変化した原因を切り分けやすくなります。
| 見るポイント | 確認する内容 | 判断できること |
|---|---|---|
| 画面遷移 | ユーザーがどの画面をどの順番で見ているか | よく使われる導線と離脱しやすい画面 |
| イベント | 検索、タップ、カート追加、お気に入り、購入など | 重要な行動が発生しているか、どこで止まっているか |
| ファネル | 会員登録、購入、予約、申込などのステップ別の通過率 | 優先して見直すべき画面や手順 |
| コホート・リテンション | 利用開始時期や流入元が同じユーザーの継続状況 | 休眠化しやすい時期やユーザー層 |
| 施策後の行動 | 通知やメールを受け取った後の起動、閲覧、購入など | 施策が次の行動につながったか |
例えば、ECアプリで商品詳細ページまでは見られているのにカート追加が少ない場合は、価格、配送情報、レビュー、ボタンの見つけやすさを確認します。カート追加後の離脱が多い場合は、ログイン、送料表示、クーポン入力、決済手順など、後半のファネルを見直します。
ヒートマップやセッションリプレイに対応する分析ツールを利用している場合は、タップの集中箇所や実際の操作の流れを補助的に確認できます。ただし、利用できる機能はツールによって異なります。行動データを扱う際は、利用規約、同意取得、社内のデータ管理ルールを確認し、改善に必要な範囲で分析します。
また、継続利用しているユーザーに共通する行動を探すことも有効です。初回利用から数日以内にお気に入り登録をしたユーザーや、特定機能を複数回使ったユーザーの継続率が高い場合は、その行動へ進みやすい導線を設計し、施策前後の数値を比較します。
アプリ分析を改善施策につなげる流れ
アプリ分析は、数字を確認するだけでは改善につながりません。目的、KPI、原因、施策、検証の順で整理し、数値が変化した理由を確認してから次の施策を決めます。
-
1
目的を決める
継続率を高めたいのか、購入率を上げたいのか、休眠ユーザーの再訪問を増やしたいのかを明確にします。 -
2
関連するKPI・指標を選ぶ
目的に応じて、DAU・WAU・MAU、リテンション率、離脱率、CVRなど、優先して追う指標を絞ります。 -
3
ユーザー行動から原因を切り分ける
画面遷移、イベント、ファネル、ユーザー層を確認し、どこで利用が止まっているかを特定します。 -
4
改善施策を実行する
UI、オンボーディング、機能導線、通知、メール、SMSなどから、原因に合う施策を選びます。 -
5
結果を比較する
施策の前後や対象グループの差を確認し、改善した指標と新たに発生した課題を整理します。
以下では、分析で見つかった代表的な課題と、追加で確認する内容、改善の方向を整理します。
分析結果に応じた改善施策の例
改善施策は、数値が下がった原因に合わせて選びます。プッシュ通知やメールなどのメッセージ施策が適する場合もありますが、画面設計や初回体験に原因がある場合は、アプリ側の改善を優先します。
| 見つかった課題 | 追加で確認すること | 改善の方向 |
|---|---|---|
| 初回起動後に利用が続かない | 初回ファネル、主要イベント、翌日リテンション率 | オンボーディング、価値説明、主要機能への導線 |
| 休眠ユーザーが増えている | DAU・MAU、最終利用日、最後に使った機能 | 機能改善、アプリプッシュ通知やメールによる再訪問の案内 |
| 登録・購入・予約の途中で離脱する | 各ステップの通過率、エラー、入力項目、表示内容 | フォーム、ログイン、決済、情報表示の見直し |
| 重要な案内が行動につながらない | 配信対象、到達、クリック、起動後のイベント | 対象者、配信タイミング、チャネル、遷移先の見直し |
メッセージ施策を行う場合は、直近の利用状況、カートや申込の状態、よく使う機能などに応じて対象を分けます。同じ内容を全ユーザーへ繰り返し送るのではなく、配信対象とタイミングを調整し、施策後の起動や目的行動まで確認することが重要です。
EngageLabで分析後の改善施策を実行する
Firebase/Google Analyticsや自社の分析基盤で課題を把握した後は、対象ユーザーへ再訪問や機能利用を促す施策を実行します。分析基盤は課題の発見とKPIの確認を担い、EngageLab AppPushやMarketing Automationは、分析基盤で確認したユーザー条件に基づいて、対象者・内容・タイミングを設定し、改善施策を実行する役割を担います。
アプリ内の再訪問や機能利用を促したい場合は、EngageLab AppPushでアプリプッシュ通知を配信できます。休眠ユーザー、特定機能を利用したユーザー、申込途中で離脱したユーザーなど、分析基盤で確認したユーザー条件に合わせて配信対象を整理します。
アプリプッシュ通知だけでなく、メールやSMSを含む複数チャネルで案内を組み立てる場合は、EngageLab Marketing Automationを使ったシナリオ配信も選択肢になります。チャネルを増やすこと自体を目的にせず、ユーザーの状態と案内の緊急度に応じて使い分けます。
- アプリプッシュ通知で再訪問や機能利用を案内する
- ユーザー属性や行動に応じて配信対象を分ける
- 必要に応じてメール・SMSを組み合わせる
- 配信後の反応とアプリ側のKPIをあわせて確認する
自社の運用環境や必要なチャネルによって、適した構成は異なります。既存システムとの連携や複数チャネルの運用を検討する場合は、導入について相談できます。まずAppPushを試したい場合は、アカウントを作成して確認できます。
アプリ分析に関するよくある質問
アプリのアクティブユーザー数に目安はありますか?
すべてのアプリに共通する目安はありません。毎日使うアプリと、予約や金融手続きなど必要なときに使うアプリでは、適切な利用頻度が異なります。他社の平均値だけで判断せず、自社の過去推移、DAU・WAU・MAU、利用開始時期別のリテンション率を比較します。
他社アプリのユーザー数は調べられますか?
他社アプリの正確なユーザー数は公開されていないことが多く、市場調査ツールや公開資料から推定値を確認する形が一般的です。推定値は、自社アプリの管理画面や分析基盤で取得した実測値と同じ条件ではありません。競合比較に使う場合は、データの出典、対象期間、推定方法を確認します。
まとめ
アプリ分析では、まず分析の目的を決め、獲得・利用状況・継続・行動・成果の各段階から必要なKPIを選びます。ダウンロード数だけで判断せず、DAU・WAU・MAU、アクティブ率、リテンション率、イベント、離脱率、CVRなどを組み合わせると、課題が発生している場所を特定しやすくなります。
数値が変化した場合は、ユーザー行動から原因を切り分け、UIやオンボーディング、機能導線、メッセージ配信などから適した施策を選びます。分析基盤で課題を確認した後、再訪問や継続利用を促す必要がある場合は、AppPushやMarketing Automationを使った施策も検討できます。







