MA(マーケティングオートメーション)を導入すると、配信数や開封率、クリック率など多くの数値を確認できます。ただし、これらの数値だけでは、施策が商談・購入・再購入などの成果につながっているか、投じた費用に見合っているかまでは判断できません。
MAの効果測定では、事業目的から必要な指標を整理し、重点管理するKPIと目標値を決めたうえで、同じ定義・期間・データ条件で測ることが重要です。その結果をROI(投資利益率)やボトルネック改善、社内の投資判断までつなげることで、単なる数値集計ではなく、次のアクションを決めるための評価になります。
この記事では、BtoBとBtoC・EC・アプリなどの違いも踏まえながら、MA導入後の効果測定を実務で進める流れを解説します。
MAの効果測定では何を確認するのか
MAの効果測定は、配信結果を集計するだけの作業ではありません。主な目的は、施策を評価し、改善すべき場所を見つけ、費用対効果や今後の投資を判断することです。
たとえば、メールの開封率が上がっても、資料請求や購入が増えていなければ、最終的な成果が改善したとは言い切れません。一方、クリック率が低くても、対象者が必要な行動を完了している場合は、クリック率だけを理由に施策を否定するのも適切ではありません。
MAの効果測定は、次の流れで考えると整理しやすくなります。
事業目的・KGI → 測定指標・KPI → 計測条件 → 測定 → ROI・診断 → 改善 → 報告・投資判断
まず「何を達成したいのか」を決め、その達成度を説明できる指標を選びます。その後、比較可能な条件で数値を測り、目標との差がどこで生じているかを確認します。最後に、改善結果と費用対効果をまとめ、継続・見直し・追加投資などの判断につなげます。
目的から逆算してKPIを設計する
MAで確認できる数値をすべてKPIにする必要はありません。KGIとKPIは指標の「役割」、施策指標・成果指標・事業指標は効果測定上の「分類」として分けて考えると、管理すべき数値を絞り込みやすくなります。
指標を設計する際は、次の順で整理します。
- 事業目的を明確にする:売上拡大、商談創出、再購入促進など、MAで支援したい事業上の目的を決めます。
- KGIを定める:事業目的の達成度を最終的に判断する指標を決めます。
- 成果指標を決める:KGIの変化を説明するために、資料請求、商談、購入、再購入などの成果を整理します。
- 施策指標へ分解する:配信、到達、クリック、Web訪問など、成果の変化を確認するための指標を整理します。
- 重点管理するKPIを選ぶ:継続的に確認し、次の改善アクションにつなげる少数の指標をKPIとして設定します。
- 目標値と評価期間を決める:自社の基準値、過去実績、KGIから逆算した必要水準などを根拠にし、いつ評価するかも決めます。
KPIの目標値は、根拠のない業界平均で埋めないことが重要です。自社の現状値や過去実績がある場合は、それを基準値として改善幅を設定します。KGIから必要件数を逆算できる場合は、達成に必要な転換率を目標値にする方法もあります。
MA効果測定 指標マップ:測定指標を施策指標 → 成果指標 → 事業指標の3段階で整理すると、BtoBとBtoC・ライフサイクルで何を見るべきかを対応付けやすくなります。
| 分類 | 何を見るか | BtoBの例 | BtoC・ライフサイクルの例 | 主な判断 |
|---|---|---|---|---|
| 施策指標 | 接触・反応 | 到達率、クリック率、特定ページ到達率 | 到達率、アプリ再訪率、特定ページ到達率 | 施策が届き、次の行動につながる状態か |
| 成果指標 | 目的行動 | MQLから商談への転換率、商談から受注への転換率 | セッションから購入へのCVR、90日再購入率、継続率 | 目的とする行動まで進んだか |
| 事業指標 | 経済価値 | 売上、粗利益、ROI | 売上、粗利益、LTV、ROI | 事業への寄与や投資価値をどう評価するか |
アプリではリテンション率、サブスクリプションでは継続率など、事業モデルに応じて成果指標を置き換えます。この分類自体がKGIやKPIを決めるわけではなく、自社の事業目的に応じて重点管理する少数の指標をKPIとして選びます。
施策指標
施策指標は、配信や接触の状態を確認するための指標です。代表例として、次のような数値があります。
- 配信数・送信数:対象ユーザー数なのか、送信試行件数なのかを固定します。
- 到達率:たとえば「成功配信先数 ÷ 送信対象数」のように、分母と配信ステータスの定義をそろえます。
- 開封率:メールでは「開封が記録されたユニーク受信者数 ÷ 成功配信先数」など、利用する配信基盤の定義に合わせます。画像読み込みやプライバシー保護機能などの影響もあるため、最終成果そのものとは扱いません。
- クリック率:ユニーククリックと総クリックを分け、分母が配信成功数なのか開封数なのかを明示します。
- Web訪問数・特定ページ到達率:ユーザー単位かセッション単位か、どのページを対象にするかを固定します。
- アプリ再訪率:D7などの評価日、対象コホート、再訪とみなすイベントを決めてから比較します。
施策指標は、異常や変化を見つけるための手掛かりとして有用です。ただし、開封やクリックが増えたことだけで、売上や粗利益が増えたと判断しないようにします。
成果指標
成果指標は、施策の先でユーザーや顧客が取った行動を確認するための指標です。BtoBとBtoCでは代表的な行動が異なります。
BtoBの例
- 資料請求数、LP訪問者に対する資料請求率
- MQL数
- SQL数、MQLからSQLへの転換率
- 商談数、MQLから商談への90日転換率
- 受注数、商談から受注への転換率
MQLやSQLは、採用している企業だけで使う指標です。自社で別のリードステージを定義している場合は、そのステージに置き換えます。また、「商談化率」のように分母が分からない表現は避け、「MQLから商談への90日転換率」のように起点と期間まで明確にすると比較しやすくなります。
BtoC・EC・アプリ・サブスクリプションの例
- 会員登録数、会員登録ページ訪問者に対する登録率
- 購入数、セッションから購入へのCVR
- 90日再購入率
- D7アプリリテンション
- サブスクリプション継続率
同じ「再購入率」「リテンション率」でも、初回購入者を追うコホート型と、一定期間の顧客構成を見る指標では意味が異なります。比較する際は、起点となるユーザー、期間、分母をそろえます。
事業指標
事業指標は、施策や顧客行動の変化が事業にどの程度つながったかを見る指標です。代表例は、売上、粗利益、CAC、LTV、ROIなどです。
ただし、これらをすべてKGIにするわけではありません。たとえば粗利益を最終目標に置く計画では粗利益がKGIになり得ますが、ROIは投資効率を確認するための評価指標として別に管理することもあります。CACやLTVも、事業モデルや評価目的に合う場合だけ採用します。
以下は、KGIからKPIの目標値を逆算する考え方を示す架空例です。数値は業界平均ではなく、比較可能な自社の基準値を前提としています。
| 項目 | BtoBの例 | BtoC・ECの例 |
|---|---|---|
| KGI | 次期6か月の新規受注粗利益 1,200万円 | 次四半期の初回購入者から得る90日以内再購入粗利益 60万円 |
| KPI | MQLから商談への90日転換率 | 90日再購入率 |
| 基準値 | MQL 200社のうち90日以内に40社が商談化し、20% | 初回購入者1,000人のうち90日以内に100人が再購入し、10% |
| 目標値 | 受注1社あたりの平均粗利益を100万円とすると、KGI 1,200万円には12社の受注が必要。商談から受注への転換率を25%とすると48商談、MQL 200社を見込むため、48 ÷ 200 = 24%と逆算 | 再購入者1人あたり平均再購入粗利益5,000円とすると、60万円に必要な120人から12%と逆算 |
| 評価期間 | MQL到達後90日でKPIを評価し、受注は180日の観測機会を与えてKGIを確定 | 次四半期の初回購入者を対象に、最後の対象者にも90日の観測期間を与えて確定 |
BtoBの例で目標を24%としたのは、受注1社あたりの平均粗利益100万円、KGI 1,200万円、MQL見込数200社、商談から受注への転換率25%から逆算したためです。MQL数、商談から受注への転換率、平均粗利益などの前提が変われば、KPIの目標値も再計算します。同様にBtoCの例でも、初回購入者数や平均粗利益が変われば12%という目標は変わります。
計測条件をそろえてMAの成果を測定する
KPIを決めても、定義や期間が毎回変わると、数値を正しく比較できません。MAの成果を測定する際は、コンバージョンの定義、評価期間、データのつなぎ方、ID、アトリビューション条件を先にそろえます。
コンバージョンの定義を決める
最初に、何をコンバージョンとして数えるかを決めます。BtoBなら資料請求、商談、受注、BtoCなら会員登録、購入、再購入などが候補になります。
同じMAでも、すべてのジャーニーで同じコンバージョンを使う必要はありません。たとえば休眠顧客向け施策では再購入、商談育成施策では商談到達を評価対象にするなど、施策目的に合わせて定義します。
コンバージョン名だけでなく、完了とみなすイベントやCRMステータス、重複排除の単位も決めておきます。購入なら注文ID、商談なら商談IDや企業IDなど、同じ成果を二重に数えないためのキーが必要です。
測定期間と比較基準をそろえる
MAの効果測定では、「4月の成果」のような集計期間だけでは条件が足りません。4月に発生したコンバージョンを見るのか、4月に施策へ接触したユーザーが後日生んだ成果を見るのかで、数値の意味が変わるためです。
| 項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 評価期間 | どの期間の施策・KPI・コスト・成果を集計するか。開始日、終了日、対象コホートやジャーニー、日時基準をそろえます。 |
| コンバージョンウィンドウ | 送信、受信、クリック、ジャーニー参加などの起点から、どこまでの期間に発生した行動をコンバージョンとして数えるかを決めます。 |
| アトリビューションウィンドウ | コンバージョンからどこまで遡ったタッチポイントを貢献度配分の候補に含めるかを決めます。 |
| アトリビューションモデル | 対象となるタッチポイントの間で、コンバージョンや収益の貢献度をどのルールで配分するかを決めます。 |
| データ成熟期間 | 遅れて発生する商談、購入、再購入などをいつまで待ち、直近値をいつ確定値として扱うかを決めます。 |
コンバージョンウィンドウとアトリビューションウィンドウは同じものではありません。Googleの公式資料でも、コンバージョンを記録する期間と、アトリビューションで遡る期間は別の概念として扱われています。Google 広告の計測期間やGoogle Analyticsのアトリビューション設定を参考にしつつ、自社の購入・検討サイクルや実際のコンバージョン遅延に合わせて設定します。
直近期間は、費用だけが先に計上され、商談や購入がまだ十分に発生していないことがあります。この場合は、同じ経過日数のコホート同士を比較する、ウィンドウ満了後に確定する、直近値を「暫定」と明示する、といった方法で比較条件をそろえます。
必要なデータをつなぐ
成果を施策と結び付けて測るには、必要な範囲でデータをつなぎます。主な対象は次のとおりです。
- MA内の配信・ジャーニー参加・クリックなどのデータ
- Webサイトやアプリの行動データ
- CRM・SFAのリード、商談、受注データ
- EC・購買システムの注文、購入金額、再購入データ
重要なのは、CDPやDWHを必ず構築することではなく、今回評価する成果に必要なデータが、同じユーザーや顧客、取引として結び付くことです。ユーザーID、顧客ID、注文ID、商談ID、イベント、タイムスタンプなどの対応を整理します。
EngageLabでは、モバイルSDK、Web SDK、APIをデータソースとして利用でき、業務システムやCRM側の行動データはAPI経由でEngageLabへ送信できます。ユーザー管理ではuser_id、anonymous_id、registration_idなどを扱います。実際に連携する際は、自社側の顧客IDとどのように対応させるかを設計してください。詳しい仕様はデータソース設定とユーザー管理で確認できます。
ID・アトリビューション条件をそろえる
施策接触後に購入や受注が発生しても、その事実だけで「MAが生み出した成果」とは言えません。効果測定では、観測された成果と、ルールで関連付けた成果、アトリビューションで配分した成果、因果的な増分成果を分けて扱います。
| 段階 | 意味 | 表現例 |
|---|---|---|
| 観測 | システムにコンバージョンや購入が記録された状態 | 「購入が記録された」 |
| 関連付け | ID、時間、業務ルールによって接触と成果を結び付けた状態 | 「メッセージ受信後30日以内に同一顧客IDで購入が確認された」 |
| アトリビューション | 明示したウィンドウとモデルでタッチポイントへ貢献度を配分した状態 | 「ラストタッチルールで当該ジャーニーに帰属した売上」 |
| 増分・因果 | 施策がなければ起きなかった差分を比較設計などで推定した状態 | 「対照実験で推定された増分コンバージョン」 |
たとえば、ある再購入ジャーニーで、対象コホートに820件の購入が記録され、760件を顧客IDでMAユーザーと結び付け、そのうち740件が設定したウィンドウとアトリビューションルールを満たしたとします。この場合、「定義した条件のもとで740件の購入が当該ジャーニーに帰属した」とは言えますが、「ジャーニーが740件の購入を生み出した」とは断定できません。
既存の購買意向、広告、価格施策、営業接触、自然再訪など、別の要因が残るためです。因果的な増分まで評価する場合は、可能であればホールドアウトなど施策接触の有無を比較できる設計を用意し、不確実性も確認します。
EngageLabのジャーニー分析では、参加者数、目標コンバージョン数・率、配信、クリック、収益などを確認できます。目標コンバージョンは、メッセージ送信後に設定した期間内で目標操作が行われれば記録され、開封やクリックは必須条件ではありません。収益は、メッセージ受信後の設定期間内に発生した関連購入の金額を集計する仕様です。
なお、同じユーザーの行動が複数のジャーニーの対象期間に重なる場合、それぞれのジャーニーで有効なコンバージョンとして記録されることがあります。全社の成果を集計するときは、ジャーニー別の数値をそのまま足さず、注文IDなどで重複を確認するか、明示した配分ルールを使います。
MAの費用対効果・ROIを計算する
施策の成果を測定したら、次に投じたコストとの関係を確認します。ROIを計算する前に、「何のROIを評価するのか」を決めることが重要です。
全社の年間MA運用を評価するのか、特定四半期の運用を評価するのか、特定ジャーニーを評価するのかで、含める成果とコストは変わります。単一ジャーニーの3か月成果に、MA全体の年間コストをそのまま対応させると、投資効率を正しく比較できません。
MAにかかるコストを整理する
MA関連コストは、ツール利用料だけでなく、評価対象の運用に実際に使った費用まで確認します。代表的な項目は次のとおりです。
- ツール・チャネル費:MA利用料、追加機能、メール・SMSなどの従量費
- 初期導入費:初期設定、データ移行、連携、計測実装、研修など
- 社内運用人件費:ジャーニー設計、セグメント設計、制作、QA、分析・改善に使った工数
- 外注費:制作会社、代理店、コンサルティング、開発・保守など
- コンテンツ制作費:メール、LP、画像、動画、翻訳、テスト用制作など
特定ジャーニーに直接対応する費用は、そのジャーニーへ直接計上します。複数施策で共通利用するプラットフォーム費や運用人件費は、送信量、対象ユーザー数、運用時間など、資源消費を説明できる基準で配賦します。重要な共通費を合理的に配賦できない場合は、直接費だけのROIと、共通費を含めたROIを分けて示す方法もあります。
初期導入費も、何を判断するかで扱いが変わります。導入開始からの累積ROIを見るなら初期費用を含めます。一方、今後の継続・停止を判断する場合は、すでに回収不能な初期費用と、今後の選択によって変わる費用を分けて考えます。
評価対象となる成果を整理する
ROIの成果側には、売上をそのまま入れるのではなく、どの利益段階を使うかを明確にします。
- 売上:観測された売上と、アトリビューションルールに基づいて施策へ配分した売上を区別します。売上 ÷ コストは収益倍率を見る指標であり、この記事ではROIと区別します。
- 粗利益・貢献利益:商品・サービス提供に伴う原価や変動費を差し引いた利益を使います。MA関連コストを差し引く前の利益かどうかも明示します。
- 増分利益:施策がなければ発生しなかった差分を比較設計などで推定できる場合に使います。単にMA接触後に発生した売上を増分利益とは呼びません。
- アトリビューションに基づく利益:明示したルールで施策へ配分した売上を利益換算して使う場合は、因果的な増分利益と分けて扱います。
- 工数削減額:外注費・残業代・採用費など実際に支出が減った効果と、同じ人員の時間を別業務へ再配分できた価値を分けます。
売上や粗利益をMA施策の成果として扱う場合は、対象期間、コンバージョン定義、アトリビューション条件を同時に記録します。特に、MA接触後に記録された収益をそのまま「MAによる売上」と表現しないことが重要です。
ROIを計算し、投資効率を評価する
費用対効果は、投じたコストに対してどのような効果が得られたかを評価する考え方です。ROIはその代表的な指標の一つですが、売上対コスト比や投資回収期間とは意味が異なります。「回収率」は指す式が曖昧になりやすいため、使用する場合は計算式を併記するとよいでしょう。
ROIにも複数の計算口径があります。JOGMECの投資利益率の解説でも、何を投資額・利益として扱うかによって利益率の意味が変わることが示されています。そのため、用語だけで式を決めず、記事や社内レポートで採用する式を明示します。マーケティング投資の一例として、Think with Googleでは、増分粗利益とマーケティング投資を用いたROIの計算例が示されています。この記事では、MA導入後の投資効率を比較するため、次の利益ベースの方式を使います。
MA ROI(%)={評価対象に対応する増分粗利益・増分貢献利益など - 同じ評価対象に対応するMA関連総コスト}÷ MA関連総コスト × 100
この式では、ROIが0%なら対象期間の利益とMA関連コストが同額で、プラスならコストを上回るリターン、マイナスならその前提・期間ではコストを回収できていない状態です。ただし、ROIの高低だけで施策の因果効果や将来価値まで確定するわけではありません。
増分性まで確認できず、アトリビューションルールに基づく粗利益・貢献利益を使う場合は、「アトリビューションに基づくROI推定」として、因果的な増分ROIと区別します。売上をそのままコストと比較する場合は、ROIではなく「売上対コスト比」など別の名称で管理すると混同を防げます。
以下は計算方法を示す架空例です。業界平均値ではありません。
| 項目 | 金額 | 前提 |
|---|---|---|
| 検証された増分売上 | 2,000,000円 | 単なる対象期間内の観測売上ではなく、比較設計で推定した差分 |
| 粗利益率 | 40% | 対象商品の承認済み実績率 |
| 増分粗利益 | 800,000円 | 2,000,000円 × 40% |
| ジャーニー直接費 | 450,000円 | 配信、制作、運用人件費など |
| 合理的に配賦した共通費 | 150,000円 | 配賦基準と対象期間を固定 |
| MA関連総コスト | 600,000円 | 450,000円 + 150,000円 |
この場合、ROIは(800,000円-600,000円)÷600,000円×100=33.3%です。MA関連総コスト控除後の差額は200,000円です。同じ条件で「800,000円 ÷ 600,000円=1.33倍」と計算した場合は便益費用比、「2,000,000円 ÷ 600,000円=3.33倍」は売上対コスト比であり、この記事で採用するROIとは分けて扱います。
粗利益率、アトリビューションの強さ、共通費の配賦などに不確実性がある場合は、低位・基準・高位の複数シナリオで結果を確認すると、単一の数字だけで判断するより前提の影響を把握しやすくなります。費用と便益が複数年にまたがり、発生時点の差が大きい場合は、単純なROIだけでなく時間価値を考慮した評価が必要になることもあります。
EngageLabでは、Purchaseなどのイベントをジャーニー条件に利用し、コンバージョン数や購入金額に基づく収益データを結果として確認できます。顧客側では、同じ評価範囲の契約・利用費、必要に応じた運用費などを整理し、その結果データと組み合わせて費用対効果やROIを計算します。ここで扱うROIは、前述の一般的な計算口径に基づくもので、EngageLab固有の計算式を示すものではありません。
EngageLabのメッセージ配信統計画面のイメージ
指標からボトルネックを特定して改善する
目標との差が見つかったら、すぐに文面や配信対象を変更するのではなく、まず計測条件に問題がないかを確認します。指標の変化は原因ではなく、原因を探すための手掛かりだからです。
特に、次の順で確認すると、計測上の変化と施策上の問題を切り分けやすくなります。
- コンバージョンウィンドウが満了し、数値が十分に成熟しているか
- IDの紐付け率や顧客・商談・注文の関連付けが変わっていないか
- イベント発火、タイムスタンプ、タイムゾーン、データ取り込みに欠損がないか
- アトリビューションモデルやウィンドウ、対象チャネルを変更していないか
- 複数のジャーニーの重複や重複排除条件が変わっていないか
- 比較対象のコホート、季節性、キャンペーン条件、営業フォローなどがそろっているか
計測条件に問題がなければ、「指標 → 原因仮説 → 次に確認するデータ → 改善施策 → 再測定」の順で進めます。
| 指標の変化 | 原因仮説・次に確認すること | 改善の方向 |
|---|---|---|
| 到達率が低い | 対象データ、宛先状態、同意状況、配信条件、エラー内容を確認する | 不達データの整理、対象条件や送信設定の見直しを検討する |
| 到達するが反応が弱い | 対象セグメント、内容、配信タイミング、チャネル条件を確認する | 対象・内容・タイミングの仮説を分けて検証する |
| クリックはあるがコンバージョンしない | 遷移後ページ、オファー、計測イベント、コンバージョンウィンドウ、対象セグメントを確認する | クリック後の導線やオファーを見直し、同じ計測条件で再測定する |
| コンバージョンするが事業成果につながらない | 顧客・案件の質、後工程、フォロー、成果までの時間差を確認する | 対象条件や後工程との連携を見直す |
| MQLは増えるが商談化しない | MQL定義、営業引き渡し条件、フォローの速度、対象企業の質を確認する | 見込み判定や営業引き渡し条件を調整し、同じコホートで再評価する |
| 売上はあるがROIが低い | 粗利益、アトリビューション前提、運用コスト、共通費配賦、施策配分を確認する | 高コスト工程や低収益のセグメントを見直し、投資配分を再検討する |
たとえばBtoCでは、「購入は増えたが90日再購入率が伸びない」という変化に対して、対象コホート、再購入ウィンドウ、購入者のセグメント、配信タイミングなどを確認します。BtoBでもBtoCでも、数値だけから原因を決め付けず、仮説を一つずつ検証する点は同じです。
効果測定の結果をレポートし、投資判断につなげる
効果測定の結果は、見る人の役割に合わせて情報量を変えます。ただし、集計期間やコンバージョン定義などの前提は共通にし、同じ数字を別の条件で解釈しないようにします。
役割に応じて報告項目を整理する
運用担当者:施策指標、成果指標、基準値・目標値、改善前後の変化、次に確認する仮説を確認します。次の改善アクションを判断できる粒度でまとめます。
責任者・経営層:売上・粗利益、ROI、投資額、中長期の推移、主要な前提や不確実性を確認します。個別施策の細かな数値より、KGIへの進捗と今後の投資判断が分かる形にまとめます。
数値の前提と推移をそろえて報告する
社内レポートでは、単一のROIだけを提示せず、少なくとも次の前提をそろえます。
- 集計対象期間と日時基準
- 対象ユーザー、コホート、ジャーニー、キャンペーン
- コンバージョン定義と分母
- コンバージョンウィンドウ
- アトリビューションウィンドウとモデル・配分ルール
- ID・データ連携のカバー率や未計測範囲
- 基準値と目標値、比較条件
- 暫定値か確定値か
- 観測・関連付け・アトリビューション・増分のどの段階の数値か
前回から定義、ウィンドウ、計測設定を変更した場合も記録します。単月の一点だけで判断せず、前期・前年同期や改善実施前後の推移を確認すると、施策の変化と季節性などを切り分けやすくなります。
継続・見直し・追加投資・停止を判断する
効果測定の最終目的は、数字を報告することではなく、次の意思決定につなげることです。判断の選択肢は「継続」だけではありません。
- 現状の条件で継続する
- 改善条件を決めて継続する
- 投資規模を縮小する
- 予算や施策配分を見直す
- 追加投資する
- 更新・追加投資を見送る
- 必要に応じて停止を検討する
ROIが高いから自動的に追加投資、低いから即停止と決めるのではなく、KGIの達成度、改善余地、データの信頼性、他施策との機会費用、今後発生するコストを合わせて判断します。継続・停止のような今後を見据えた判断では、すでに回収不能な初期費用と、これからの選択で変わる費用・便益を分けることも重要です。
まとめ
MAの効果測定は、開封率やクリック率を確認して終わるものではありません。事業目的からKPIを決める → 定義・集計条件をそろえて測る → ROIまで評価する → 原因を切り分けて改善する → 社内報告・投資判断に使うという流れで進めると、数値を次のアクションへつなげやすくなります。
まずは、自社のKGI、重点管理するKPI、基準値、目標値、評価期間を一枚に整理し、次にコンバージョン定義やID・データ連携条件をそろえてください。ROIを計算する際は、成果とコストを同じ評価単位・期間に合わせ、売上、粗利益、増分利益の違いも明確にします。
EngageLabのMarketing Automationでは、ジャーニーの配信状況、目標コンバージョン、収益などの結果データを確認できます。自社の計測条件や運用方法に合わせて試したい場合は、以下から確認できます。
まだ導入前の段階で準備や進め方を確認したい場合は、中小企業のMA導入|失敗を防ぐ7ステップをご覧ください。BtoB向けの製品比較が必要な場合は、BtoB向けMAツール比較9選で選定ポイントを整理しています。







