MA(マーケティングオートメーション)を活用して、ユーザーへのフォローアップを自動化したいとお考えではありませんか?
すでにシナリオ機能を利用していても、どの条件から始め、どこで分岐させ、いつ終了させるべきか迷い、十分に使いこなせないまま、手動でのフォローアップや一斉配信に頼っている方も少なくありません。
本記事では、MAシナリオの基本の仕組みから、最初に作るシナリオの選び方、テンプレートに沿った設計手順、公開後の効果測定と改善方法までを順に解説します。
MAシナリオとは?仕組みを5つの要素で理解する
MAシナリオとは、顧客の属性や行動に応じて、どのタイミングでどのコミュニケーションを行うかを設計した一連の流れです。マーケティングオートメーションのシナリオ機能は、この流れを「開始条件」「待機」「条件分岐」「アクション」「終了条件」の5つの要素として登録し、自動で実行します。
「資料を請求した人にお礼のメールを送り、開封しなかった人には別の案内を送る。商談を予約したら配信を止める」といった業務の流れも、この5要素に分解できます。それぞれの役割は次のとおりです。
- 開始条件:対象ユーザーをシナリオに登録する条件です。具体的には、ユーザー属性や資料ダウンロードなどの行動イベントを設定します。
- 待機:次の判定やアクションまで一定時間、または特定のイベントが発生するまで待つ設定です。例えばお礼メールの送信後、3日間様子を見るようなケースが該当します。
- 条件分岐:ユーザーの属性、行動、状態に応じて、その後の処理を分ける設定です。例えば、メール内の関連資料リンクをクリックしたかどうかで処理を分岐させます。
- アクション:システムが実行する処理です。メッセージ配信、タグ・スコアの更新、営業担当者への通知などが含まれます。
- 終了条件:購入や申込などの目標達成後にシナリオを終了する条件です。
シナリオが思いどおりに動かないときも、この5つのうちどの要素に原因があるのかという視点で見直すと、切り分けが速くなります。
MAシナリオが向いている施策・向いていない施策
MAシナリオは、条件を明確にできる反復業務に向いています。自動化の対象を選ぶ際は、 次の観点で判断しましょう。
- 向いている施策:同じ条件で繰り返し発生し、対象、開始・終了条件、配信内容、KPIを明確にできる施策
- 向いていない施策:発生頻度が低く個別判断が欠かせない施策や、必要なデータ、受信許諾、配信内容が固まっていない施策
後者については、必要なデータや運用条件が整えてから、自動化を検討するのが適切です。
最初に作るMAシナリオの選び方と代表例
シナリオの仕組みを理解しても、「自社の業務ではどこに使えるのか」「どの施策から着手すべきか」で手が止まりがちです。最初のシナリオは、次の3つの基準で選びます。
- 事業価値が明確か:購入や商談化など、成果につながる行動がはっきりしているか
- データとコンテンツがそろっているか:開始条件の判定に使う行動データと、配信する案内文や資料を今すぐ用意できるか
- 設定・保守しやすいか:分岐が少なく、担当者が変わっても維持できるフローか
この3つの基準を満たす候補の中から、目的が明確で条件がシンプルなシナリオを一つに絞りましょう。最初から複数を同時に走らせると、効果の検証も保守も難しくなります。
代表的な設定例を4つ挙げます。いずれも一例であり、すべての企業に当てはまる正解ではありません。「どのような課題や条件に適したシナリオか」を比べ、自社の状況に近いものを選ぶための材料としてご覧ください。
| タイプ | シナリオ | 概要 |
|---|---|---|
| BtoB | 資料ダウンロード後のフォロー | 後続資料をクリックしたかどうかに応じて関連コンテンツを出し分け、商談予約後にシナリオを終了する |
| BtoB | ウェビナー後のフォロー | 参加・不参加の状態に応じて、より詳しい資料または録画コンテンツを送信する |
| BtoC | カート内商品の値下げ通知 | 商品の値下げ時に通知条件を満たす未購入ユーザーへ通知し、購入済みまたは商品をカートから削除したユーザーは除外する |
| BtoC | 有料会員の更新案内 | 有効期限前に未更新の会員へ通知し、更新が完了したら通知を停止する |
シンプルなシナリオから始めたい方は、後述の「資料ダウンロード後のフォロー」の設計例をご覧ください。
【テンプレート付き】MAシナリオの設計手順
作りたいシナリオが決まったら、設定・テスト可能な設計案に落とし込みます。MAシナリオの作り方は、次の5つのステップとテンプレートで整理できます。最後に、EngageLabでの設定例も紹介します。
ステップ1:目的とKPIを決める
最初に、ユーザーにどの行動を取ってほしいのか、その効果をどの指標で判断するのかを決めます。「商談を予約してほしい。効果は商談化率で測る」のように、行動と指標を対で言い切れる状態がゴールです。ここが曖昧だと、後の分岐やアクションを決める基準がなくなり、公開後の効果も判断しにくくなります。
ステップ2:対象ユーザーと開始条件を決める
次に、どのユーザーを対象とし、どのイベントでシナリオを開始し、どのユーザーを除外するのかを決めます。あわせて、開始条件の判定に必要なデータと、配信するコンテンツがそろっているかもこの段階で確認しておきます。
対象ユーザーの行動と接点を洗い出す準備としては、カスタマージャーニーマップの作成が役立ちます。マップで整理した接点の中から、シナリオの入口になるイベントを選ぶ流れです。
ステップ3:待機時間、分岐、アクションを設定する
続いて、シナリオの中身を決めます。次の判定まで何日(またはどのイベントまで)待つのか、どの条件でどの経路に分岐させるのか、各経路でどのアクションを実行するのかを明確にします。アクションにはメッセージの配信だけでなく、タグやスコアの更新、営業担当者への通知も含まれます。
Email(メール)やAppPush(アプリへのプッシュ通知)といったチャネルは、各アクションの設定項目の一つとして選びます。メールを軸にしたジャーニーを詳しく設計したい場合は、カスタマージャーニーメールの設計を参照してください。
ステップ4:終了条件を決める
見落とされやすいのが終了条件です。目標の達成、配信停止の申し出、フォロー期限の超過など、どの場合にシナリオを終了するのかを明記します。必要に応じて、営業やサポートなど有人対応へ引き継ぐ条件も決めておきましょう。終了・除外条件が不十分だと、本来フォローを止めるべきユーザーにも配信が続くおそれがあります。
ステップ5:設定してテストする
設計案が完成したら、MAツール上でルールを設定し、公開前にテストします。少なくとも、次の項目を確認しましょう。
- 通常経路:想定どおりに開始し、正しい分岐とアクションを経て終了するか
- 目標未達成経路:コンバージョンしなかった場合も、想定したフォローと終了条件が機能するか
- 各条件分岐:すべての分岐で、対象ユーザーが正しい経路へ進むか
- 待機・タイムアウト:待機時間の経過後や対象イベント発生しなかった場合に、意図した処理へ進むか
- 配信頻度:1日・1週間などの配信上限が正しく適用されるか
- 再参加:同じユーザーが再び開始条件を満たした場合の挙動が設計どおりになっているか
- データ欠損:必要な属性やイベントがないユーザーを誤った経路へ送らないか
- 重複接触:EmailやAppPushなど、複数チャネルから同じ案内が重複して届かないか
- 除外・終了:コンバージョン済み、配信停止済み、除外対象のユーザーが正しくシナリオから外れるか
主要な経路と例外条件を確認してから運用を開始します。
MAシナリオ設計テンプレート
ここまでの決定事項は、次のテンプレートに沿って整理すると、MAツールへ設定する前にシナリオの全体像を確認でき、項目の抜けにも気づけます。
| 項目 | 決める内容 |
|---|---|
| シナリオ名 | 用途が分かる名称 |
| 目的 | 解決したい課題や実現したい状態 |
| KPI | 効果を判断する指標 |
| 対象ユーザー | シナリオの対象となるユーザー |
| 開始条件 | シナリオへ登録する属性・行動条件 |
| 待機 | 待機時間、または待機するイベント |
| 条件分岐 | その後の処理を分ける条件 |
| アクション | 配信、情報更新、担当者への通知など |
| 配信内容・チャネル | メッセージ内容と使用チャネル |
| 終了条件 | シナリオを終了する条件 |
| 必要なデータ | 開始条件や分岐の判定に必要なユーザー属性・行動イベント |
| 配信頻度 | 配信間隔や接触回数の上限 |
| 再参加条件 | 同じユーザーが再び参加できる条件 |
記入例:資料ダウンロード後のフォロー
以下は、目的と条件が比較的シンプルなBtoBシナリオをテンプレートに当てはめた例です。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| シナリオ名 | 資料ダウンロード後の商談フォロー |
| 目的 | 資料請求後の見込み客を商談予約へつなげる |
| KPI | 商談予約率 |
| 対象ユーザー | 対象資料をダウンロードした未商談ユーザー |
| 開始条件 | 資料ダウンロードイベントの発生 |
| 待機 | お礼メール送信後3日間待機 |
| 条件分岐 | 関連資料のリンクをクリックしたか |
| アクション | クリックあり:導入事例を送信 クリックなし:課題解説記事を送信 |
| 配信内容・チャネル | Email:お礼メール、導入事例、課題解説記事 |
| 終了条件 | 商談予約、配信停止、フォロー期間終了 |
| 必要なデータ | 資料ダウンロード、メールクリック、商談予約の各イベント |
| 配信頻度 | 本シナリオからの配信は3日間隔で最大2通 |
| 再参加条件 | 別の資料をダウンロードした場合は再参加可 |
EngageLabでの設定例:基本例と応用例
EngageLabは、Aurora Mobile(NASDAQ: JG)が展開する顧客エンゲージメントプラットフォームで、1,000社以上の企業に利用されています。Aurora Mobileは日本法人「Aurora Mobile株式会社」を設立し、現地のサポート体制も整えています。
EngageLabのMAでは、Email、SMS、WhatsApp、AppPush、WebPushなどの設定済みチャネルを使い、ユーザーの属性や行動に応じた配信フローを設計できます。
以下では、基本例と応用例を通じて、開始条件から分岐・配信・終了までの流れを見ていきます。こうしたシナリオ設計の考え方は他のMAツールにも応用できますが、利用できる機能や具体的な設定方法はツールによって異なります。
基本例:資料ダウンロード後のフォロー
EngageLabのJourney作成画面では、左側の一覧から「Emailテンプレート」「待機」「条件分岐」「終了」などのコンポーネントをキャンバスにドラッグ&ドロップし、コンポーネント同士を線で接続することで、直感的に配信フローを組み立てられます。
【シナリオ作成例】
【シナリオ作成例】
- 開始条件:資料ダウンロードイベントが発生したユーザーをシナリオへ自動登録
- 初回アクション:お礼のEmailを送信し、その後「3日間の待機」を設定
- 条件分岐:メール内のリンククリック有無で配信経路を分岐
- クリックあり:導入事例コンテンツを案内
- クリックなし:課題解説コンテンツを案内
- 終了条件:途中で商談予約イベントが発生した場合は、その時点でシナリオを終了
各コンポーネントでテンプレートや分岐条件を設定後、配信テストを実施してから「公開」を行います。実際のコンポーネント構成や公開前の確認項目は、EngageLabのJourney作成ドキュメントも参照してください。
応用例:カート内商品の値下げ通知
上の画面は、EngageLabのMA機能で「カート商品の値下げ通知」を組んだ応用例です。
ビジュアルジャーニー設計画面の「開始」コンポーネントに、カートへの商品追加を設定します。その後、「イベント監視」でカート内商品の値下げを検知したら、AppPushでユーザーへ通知します。
続いて、「イベント待機」で3時間以内に購入したかどうかを判定します。 未購入ならEmailで再度案内、購入済みならAppPushで決済完了を知らせ、いずれの経路も「終了」へ進みます。
価格やカートの情報を条件に使うため、商品・イベントデータの連携が必要です。AppPushとEmailの役割分担も必要になるため、マルチチャネルマーケティングの考え方を参考にしながら、基本例に慣れた後に検討するシナリオです。
実際の施策を一つ設定し、配信フローと操作性を無料で確認できます。
MAシナリオの効果を測定・改善する方法
シナリオは公開して終わりではありません。有効かどうかを数値で判断し、改善の実行までつなげます。本節ではシナリオ単位の診断に絞り、KPI設計やROI評価の詳細はMAの効果測定方法で扱います。
効果測定で見るべきKPI
確認する指標は、次の4つの観点に分けて整理します。
- 最終成果:購入率、商談化率、予約率、CVR(コンバージョン率)
- シナリオ運用:シナリオに参加したユーザー数、配信数、コンバージョンイベント数
- メッセージ反応:到達率、クリック率など、各チャネルに適した指標
- リスク指標:配信停止率、スパム報告率、配信失敗率、重複接触率
最終成果の数字だけを見ていると、問題がシナリオのどこで起きているのかが分かりません。この4観点をそろえて確認することで、原因を特定しやすくなります。
数値から問題箇所を特定する方法
数値は「最終成果→シナリオ運用→メッセージ反応→リスク指標」の順にたどると、問題が発生している箇所を絞り込めます。判断の基準は、一般的に言われる基準値ではなく、自社の過去実績や変更前後の数値との比較に置きます。
数値の傾向と確認すべき項目の対応は次のとおりです。
| 数値の傾向 | 主な確認項目 |
|---|---|
| シナリオ参加ユーザー数が少ない | 対象ユーザー、開始条件、データ連携 |
| コンバージョンが少ない | 配信内容、タイミング、チャネル選択 |
| 特定の分岐・チャネルだけ成果が低い | 対象ユーザーとの適合性、次のアクション |
| 配信停止や苦情が増えている | 重複配信、終了条件、配信頻度 |
| 配信失敗が多い | 連絡先情報、受信許諾、配信設定 |
改善仮説を立て1項目ずつ検証する
問題箇所を特定したら、 「仮説→変更→検証」の順で改善します。ボトルネックの原因について仮説を立て、期待効果、実施の難易度、顧客体験への影響を基準に優先順位を付けます。変更は原則として一度に1項目です。複数の項目を同時に変えると、どの変更が効いたのか判別できなくなるためです。
そのうえで、事前に決めたKPIと検証期間に基づいて、変更前後またはA/Bテストの結果を比較します。結果に応じて、変更を採用する、再調整する、元に戻すのいずれかを判断します。
クリック率が上がっても、それだけで事業上の成果が改善したとは限りません。最終成果に加え、配信停止率やスパム報告率などのリスク指標も併せて確認してください。
まとめ:シンプルなMAシナリオから始めよう
MAシナリオは、開始条件、待機、条件分岐、アクション、終了条件の5つの要素で成り立ちます。まずは自社の目的、必要なデータとコンテンツ、運用の負荷を基準に、優先して取り組むシナリオを一つ選びましょう。最初から複雑な分岐を組む必要はありません。公開後は成果を測定して「仮説→変更→検証」の流れで改善を続けることが重要です。
MAシナリオの設計・運用を具体化する際は、利用する機能や必要なデータ、配信条件も確認してください。
EmailやPushなどを組み合わせ、ユーザーの行動に応じたフォローを設計できます。







