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高橋 ゆうこ

更新日:2026-09-08

読了目安:10分

再購入してくれたお客様は、あなたのマーケティング施策によって呼び覚まされたのでしょうか? それとも、たまたま自然にリピートしていただいただけでしょうか?

この違いが見分けられず、施策の正確な効果検証やチャネルごとの貢献度の帰属(アトリビューション)ができない——そんな課題の原因はおそらく、自社の状況に合わせた「休眠顧客の掘り起こし」の明確な基準が定まっていないことにあります。

本文では、休眠顧客と配信対象の定義、接触を止める条件、復帰と施策効果の測り方を順に整理します。さらに、事業規模の拡大に伴って手作業での運用が難しくなった場合に、対象者の抽出から配信、効果測定までを自動化する方法についても解説します。

休眠顧客の掘り起こしで対象選定・停止条件・効果測定を設計するイメージ

休眠顧客をどう定義し、対象を絞るか

ECや小売など、顧客の離脱が明確な解約として表れないビジネスでは、30日、60日、90日といった一律の日数や特定のパーセンタイルだけで休眠を確定せず、自社の購買履歴と施策の目的に基づいて基準を決めます。

基準は一度決めて終わりではありません。施策の結果を検証し、商品カテゴリーや顧客層ごとに見直します。

自社データに基づいて休眠基準を決める

  • 1判定の目的と効果測定期間を決める:
    休眠顧客を抽出して何を行うかを先に決めます。再購入を促すキャンペーンなら、クーポンの有効期間や商品の補充サイクルなどを踏まえ、施策後に成果を確認する期間も設定します。
  • 2再購入率が低下する時点を探す:

    過去に購入した顧客について、購入から30日後、60日後、90日後などの時点ごとに、事前に設定した効果測定期間内の再購入率を集計します。商品カテゴリーや購入頻度によって購買サイクルが異なる場合は、顧客をグループに分けて確認します。

    例:成果を確認する期間を30日と設定した場合、最終購入から60日、90日、120日が経過した顧客について、その後30日以内の再購入率を比較します。仮に再購入率が60日時点では14%、90日時点では6%に下がり、120日時点でも5%程度にとどまる場合、90日を休眠候補として検討できます。

    注意:ここで示した日数と数値は、ただ手順を説明するための例です。また、直近に初回購入した顧客は、既存顧客と同じ基準では判断しません。初回購入者だけを購入時期ごとのグループに分け、一定期間内の2回目購入率を確認したうえで、別の基準を設定します。

  • 3候補となる休眠日数を別の期間で検証する:

    前項で選んだ候補日数を、基準の検討に使っていない別の期間の顧客データに適用します。休眠と判定した顧客の自然再購入率と、抽出される対象者数を確認します。

    たとえば、ある期間のデータから90日を候補にした場合は、別の期間にも同じ条件を適用します。休眠と判定した顧客の自然再購入率が高い場合は基準を延ばし、商品カテゴリーや顧客層による差が大きい場合は条件を分けます。別の期間でも同様の傾向が確認できたら、初期基準として採用します。

休眠顧客の基準を自社データから決める4段階の手順
基準を決めにくいビジネスの注意点

一度きりの購入が中心の商品、購買サイクルが非常に長いBtoBビジネス、季節性が強い商品、再購入のサンプルが少ない事業では、購入間隔のデータだけでは安定した基準を設定できません。商談の進捗、契約更新日、サービスの最終利用日や利用状況など、事業に合う別の休眠シグナルも組み合わせてください。

配信対象を3種類に分ける

休眠候補を抽出したら、対象外、優先、見送りの3種類に分けます。

  • 対象外:配信停止済み、同意の記録を確認できない、苦情の履歴がある、または連絡を明確に拒否している顧客。メール配信では、配信リストの品質と配信停止導線も確認する
  • 優先:休眠基準を超えてから日が浅く、過去に継続的な購入や利用がある顧客
  • 見送り:休眠期間が極端に長い、購入が一度だけ、過去の顧客価値が低い、またはデータが不完全な顧客

さらに細かく分ける場合は、行動セグメンテーションの考え方を利用できます。

何回まで接触し、いつ停止するか

接触回数に業界共通の正解はありません。まず小規模な配信で反応を確認し、追加の接触によって得られる復帰と、配信コストや配信停止などのリスクを比較して上限を決めます。接触回数はメール、AppPush、SMSなどのチャネルをまたいで通算します。AppPushで1回、メールで1回接触した場合は合計2回です。

各チャネルの役割は、マルチチャネルマーケティングの記事で解説しています。

休眠顧客への配信から復帰確認、追加接触、終了までのフロー
  • 次の接触までの判定期間を決める:過去の施策データがある場合は、配信から購入、ログイン、利用再開などの復帰行動が発生するまでの日数を確認します。日ごとの復帰が落ち着く前に次のメッセージを送ると、前回の効果と追加配信の効果を区別できません。反応が落ち着いた後に、未復帰の顧客だけを次の接触へ進めます。
  • 小規模な配信で初期値を作る:過去データがない場合は、最初の配信だけを行うグループと、未反応者に1回追加で接触するグループを設け、同じ期間の復帰率を比較します。2回目の接触によって復帰が増えた場合に限り、3回目を試すか検討します。これは業界基準となる回数ではなく、追加接触の効果を一段階ずつ確認するための進め方です。
  • 追加接触の効果から上限を決める:1回目、2回目、3回目の接触後に新たに復帰した顧客数をそれぞれ確認します。追加接触による粗利が配信コストを上回らなくなった場合や、配信停止、苦情、バウンスが増えた場合は、それ以上接触しません。
  • 顧客ごとの終了条件を決める:購入、ログイン、利用再開など、事前に定義した復帰行動が発生した顧客は、その時点でジャーニーから除外します。配信停止の申請、苦情、ハードバウンスが発生した顧客も直ちに除外します。反応がないまま接触回数の上限に達した場合も、その施策での接触を終了します。

施策全体については、配信停止率、苦情率、バウンス率などが自社の通常配信や利用中の配信サービスで定められた上限を超えた場合に停止します。安全指標に問題がなくても、追加接触による復帰がほとんど増えない場合は、配信を続けるのではなく、対象選定、チャネル、訴求内容を見直します。

復帰と施策効果をどう測るか

開封やクリックで判断しない

復帰は、購入、ログイン、利用再開など、事業成果に近い行動で定義します。開封やクリックは途中経過を確認する指標であり、休眠から戻ったことを示す最終条件にはしません。

施策群の観測復帰率と対照群の自然復帰率から増分効果を測る方法

観測復帰率の計算式

まず、対象に選んだ顧客のうち、定義した行動に至った割合を観測復帰率として計算します。

計算式

観測復帰率(%)= 定義した行動に至った人数 ÷ 掘り起こし対象に選んだ人数 × 100

分母には、実際に配信できた人数ではなく、施策開始時に選定した対象者数を用います。配信できた割合は配信成功率として別に管理し、対象選定とメッセージの到達状況を分けて評価します。

計測期間の起点は対象選定日でそろえます。たとえば、対象選定日から30日以内に購入があれば復帰とする、という形です。30日は一例なので、平均的な検討期間や購買サイクルに合わせて設定してください。

自然復帰との差を測る

観測復帰率だけでは、キャンペーンがなくても戻った顧客と、施策によって戻った顧客を区別できません。施策の効果を判断する場合は、対象条件を満たす顧客の一部を無作為に対照群へ割り当て、同じ期間の復帰率を比較します。

計算式

増分効果(ポイント)= 施策群の観測復帰率 − 対照群の自然復帰率

施策群と対照群では、対象条件と計測期間をそろえます。差がほとんどない場合は、観測された復帰の多くが自然復帰だった可能性があります。休眠復帰率はリテンション施策全体のKPIの一つとして位置づけ、継続率や顧客価値と合わせて確認してください。

休眠顧客への接触を自動化する方法

顧客数が少ない段階であれば、対象者の抽出や配信、結果の集計を手作業で行うこともできます。

しかし、事業の成長に伴って商品数や対象セグメントが増え、施策期間も長くなると、判定日や配信状況を継続的に管理することが難しくなります。対象者の抽出漏れや配信停止の遅れを防ぐためにも、一連の流れを自動化する必要があります。

一般的には、CRMや自社データベースにある顧客情報と行動データを、顧客エンゲージメントプラットフォームに連携します。そのうえで、休眠判定、対象者の除外、メッセージ配信、復帰後の停止、効果測定までを一つのフローとして設定します。

ここでは、EngageLabのMarketing Automation(MA)を例に、基本的な実装手順を説明します。具体的な画面や設定項目はサービスによって異なりますが、次の考え方はほかの同種プラットフォームにも応用できます。

顧客データと行動イベントを連携する

CRMや自社システムから、顧客ID、最終購入日、購入回数、利用状況など、休眠判定に必要な情報を連携します。EngageLab MAでは、Mobile、Web、APIをデータソースとして設定できます。自社システムを利用する場合は、APIを通じて必要なユーザー情報やイベントを送信します。

EngageLab Marketing Automationでデータソースを追加する画面

「基本設定」>「データソース」「データソースを追加」を選択し、モバイル、Web、APIのいずれかをデータソースとして設定します。設定後、EngageLab SDKまたはAPIを通じて、顧客情報や行動イベントを連携できます。

ジャーニーへの参加条件を設定する

前の章で決めた休眠基準を使い、ジャーニーに参加させる顧客を指定します。配信停止を希望した顧客、連絡への同意を確認できない顧客、苦情履歴のある顧客などは、参加条件の段階で除外します。

待機時間、条件分岐、終了条件を設定する

最初のメッセージを送った後の待機期間と、購入・ログイン・利用再開などの復帰イベントを設定します。顧客が復帰した場合はジャーニーを終了し、反応がない場合だけ次のメッセージへ進むようにします。これにより、復帰済みの顧客への不要な接触を防げます。

EngageLab MAで休眠顧客の再エンゲージメントジャーニーを設定する画面

EngageLabでは、休眠顧客の掘り起こしに利用できる顧客維持自動化ワークフローを用意しています。たとえば、「離反ユーザーの再エンゲージメント」テンプレートを選択し、ドラッグ&ドロップ式のエディターで、待機時間、条件分岐、配信チャネル、メッセージ内容、終了条件などを設定できます。用途に合うテンプレートがない場合は、ジャーニーをゼロから作成することも可能です。

利用するチャネルと配信順序を決める

EngageLab MAでは、AppPush、WebPush、Email、SMS、WhatsAppをジャーニーの配信チャネルとして設定できます。ただし、チャネルを増やすこと自体が目的ではありません。顧客の同意状況、到達可能性、配信コストを確認し、対象者に適したチャネルと順序を選びます。

配信結果と復帰状況を確認する

ジャーニー単位で送信数、配信数、クリック、コンバージョンイベントなどを確認します。到達状況の問題を詳しく調べる場合は、各チャネルの分析画面も併用します。前の章で定義した復帰率や増分効果と照らし合わせ、対象条件、待機期間、メッセージ内容を見直します。

EngageLabコンソールのユーザージャーニー一覧画面 EngageLab Emailの配信結果を確認するデータセンター画面

EngageLabの「コンソール」では、ユーザージャーニー一覧画面で各ジャーニーの参加回数、コンバージョン数、コンバージョン率などの概要データを一目で確認できます。到達状況やエラーの内訳を詳しく調べる場合は、各チャネルの分析画面を使用します。Emailの場合は、「データセンター」で送信数、配信数、無効なメール、ソフトバウンスなどを確認できます。

自動化ツールは、休眠基準や施策の停止条件を自動的に決めてくれるものではありません。先に運用ルールを定義し、そのルールを継続的に実行・検証するために利用することが重要です。

EngageLabのAIファースト顧客エンゲージメントプラットフォーム 無料で始める

EngageLab は、SMS、メール、プッシュ通知、WhatsAppなど多様なチャネルに対応したマルチチャネル・カスタマーエンゲージメントプラットフォームです。世界中でサービスを展開しており、これまでに1,000社以上の企業を支援してきた実績があります。親会社であるAurora Mobileは米国ナスダック市場に上場しており、日本法人も設立されています。

まとめ:施策前に決める3つのこと

休眠顧客の掘り起こしに、業界共通の日数や接触回数の正解はありません。自社データから候補となる条件を作り、小規模に試したうえで、配信結果に応じて見直すことが基本です。運用では、次の3点を整理します。

  • 休眠と配信対象の条件:購入後の経過日数ごとに再購入率を確認し、再購入率が低下する時点を休眠基準の候補にする。別の期間のデータでも検証し、初回購入者、商品カテゴリー、購買頻度などによって必要な場合は条件を分ける
  • 接触回数と停止条件:次の接触までの判定期間を決め、接触回数はチャネルをまたいで通算する。小規模な配信から始め、追加接触による復帰、配信コスト、配信停止、苦情、バウンスを確認しながら上限を決める。復帰や配信停止が発生した顧客は、その時点で対象から除外する
  • 復帰と施策効果の定義:購入、ログイン、利用再開など、復帰とみなす行動と計測期間を事前に定める。施策の効果を確認する場合は、対照群を設け、自然復帰を除いた増分効果を比較する

これらのルールを決めた後は、MAを使って対象者の抽出、待機、条件分岐、チャネル別の配信、復帰後の終了までを自動化できます。ただし、自動化した後も条件を固定したままにせず、商品構成、購買サイクル、顧客層、配信結果が変化した場合は、過去データを使って見直してください。

複数チャネルを使った接触設計やユーザージャーニーの自動化を検討している場合は、EngageLab Marketing Automationの製品ページで機能や導入方法もご確認ください。

EngageLabで、休眠顧客へのアプローチを自動化する

Email、AppPush、WebPush、SMS、WhatsAppを組み合わせ、対象抽出から配信、復帰後の停止までを一つのジャーニーで運用できます。